産経新聞社

メタボリックシンドローム

【スリム社会への挑戦】第2部(5)小児のメタボ

 ■改善サポートする基準策定

 心臓病や脳卒中につながる動脈硬化を起こすメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の症状は、小中学生の間にもみられることがわかってきた。

 4月実施の特定健診・保健指導は40〜74歳の成人対象だが、小児肥満が増加しており、成人の肥満と結びつくことから、早期の小児肥満対策が求められている。このため、厚生労働省の研究班(主任研究員・大関武彦浜松医科大教授)は昨年10月、世界に先駆けて小児メタボの診断基準を策定した。

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 研究は平成17年からはじまったが、成長期の子供のメタボ基準の策定は、予想以上に困難を極めた。すでにこれまでの研究の中で、子供でも大人と同じように腹囲の大きさが、メタボのリスクである血糖値や脂質、血圧の異常に関連があることはわかりつつあった。しかし、成長の過程にあるだけに、腹囲など具体的な一定の数値による基準を決めるのは困難だ。

 そこで研究班はまず、メタボ該当者・予備群が小学生より圧倒的に多い中学生に目を向けた。全国各地の医療機関で肥満外来を受診する中学生の腹囲の測定に乗り出したところ、高脂血、高血圧、高血糖などの異常が認められるのは、腹囲82センチ以上の子供が多かった。また、生活習慣病予防健診など一般的な健診を受けた中学生でも同じ腹囲82センチ以上の傾向が出たが、確実性を増すため80センチ以上に下げたという。

 ところが、もう一つ問題があった。急速に成長する小学生については、腹囲80センチ以上を必須条件にすると実情に合わない。そこで、成長途上にある体格について、腹囲を身長で割る形で比率を見たところ、その値は0・5以上という共通項でくくることができた。

 この結果、小児メタボの診断基準では、まず「腹囲が中学生80センチ以上。小学生75センチ以上。もしくは腹囲割る身長が0・5以上」であること。そのうえで、リスクとなる検査数値が、血中の中性脂肪が120mg/dl以上など▽血圧が収縮期125以上、拡張期70以上▽空腹時血糖が100mg/dl以上−とし、これが2つ以上該当するとメタボと判定される。

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 大関教授は「メタボは薬ではなく、食事と運動療法で改善できます。子供の時期に正しい生活習慣を身に付ければ一生の間、効果が持続する。診断基準はそのサポートに役立ててほしい」と強調する。

 小中学生はメタボに該当しても、直ちに心筋梗塞(こうそく)など生活習慣病を引き起こすほど深刻なケースはないが、研究班が基準に合致する子供の血管を超音波で診断したところ、すでに動脈硬化がはじまっているケースが多かった、という。日大医学部小児科の岡田知雄准教授は「海外の研究では脂質代謝異常の子供の動脈硬化が進行する速度は、標準の3倍以上とのデータがあります」と指摘する。

 過食や運動不足が進行し、いまや小中学生の10人に1人が肥満といわれ、その約3分の2が大人の肥満へ移行する。小児メタボも増えており、同省の研究班が小中学生約1200人のデータを分析したところ、小学生のメタボは10年間で1・3%から4・4%に急増していた。

 それでも、適切な運動・食事療法を行えば、メタボからの脱出は成人よりも容易だ。

 メタボ対策は「治そう」という個人の自覚によるところが多いが、それをサポートする社会のシステムの整備も不可欠である。今後、特定健診・保健指導と連動した次世代の健康対策も考慮されるべきだろう。=おわり(飽食社会取材班)

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 この連載は坂口至徳、永栄朋子、藤原由梨、大串英明が担当しました。

(2008/02/23)