産経新聞社

メタボリックシンドローム

【メタボリックシンドローム撲滅運動】「特定健診・保健指導」(3−3)

 メタボリック撲滅委員会の第3回実行委員会は、3月22日、大手町サンケイプラザで開かれ、今月スタートした「特定健診・保健指導」への具体的な取り組み、メタボ予防などをめぐって話し合った。(大串英明)

 出席者は、リーダーの宮崎滋・東京逓信病院内科部長を筆頭に委員の横出正之・京都大学探索医療センター探索医療臨床部長・教授▽柴輝男・三井記念病院糖尿病代謝内科部長▽和田高士・東京慈恵会医科大学新橋健診センター所長▽野口緑・兵庫県尼崎市国保年金課保健師▽宮地元彦・国立健康・栄養研究所プロジェクトリーダー▽斉藤満・社団法人日本ウオーキング協会事務局長▽菅野隆・健康創研代表▽鈴木志保子・神奈川県立保健福祉大学栄養学科准教授▽小野真実・前NTT東日本首都圏健康管理センタ。

                   ◇

 ■第3回実行委員会

【リーダー】宮崎滋氏

 いよいよメタボリックシンドロームの概念、あるいは理論を活用した「特定健診・保健指導」がスタートしました。肥満、内臓脂肪蓄積を基に糖尿病・脂質異常症・高血圧の発症を予防し、動脈硬化疾患の心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞を起こさないようにするには、どんな方策を取ればよいか、これが国や企業挙げて行われることになるわけです。基本的な精神は、「健康な社員がいて健康な会社」「健康な国民がいて健康な国」ということ。それには行政、各学会、さらに職域、地域などが知恵を出し合って、互いに連携し、実行に移すことが重要です。

【医学分野】横出正之氏

 この15年間の脂質異常症診療でも、中性脂肪が高くHDL(善玉)コレステロールが低い傾向が顕著になり、特に30、40代の働き盛りに目立っています。会社勤務をしつつ生活習慣を改善するのは難しいことですが、特定健診をきっかけに、スポーツ医学・栄養学・心理学などを含めた集学的なアプローチが必要なのではないでしょうか。医療者は、ややもすれば薬物治療に目を奪われがちですが、基本的に予防を軸にした健康づくりが大切です。リスクのある人たちの「行動変容」をいかに促せるかが鍵を握っており、きっちり追跡していくことが重要でしょう。

【医学分野】柴輝男氏

 私どもの病院でも、ウオーキングデーを設けているほどで、糖尿病やメタボを防ぐには日ごろの運動が大切です。そのためにも運動にいそしむ環境づくりが必要で、皆が気軽に使える運動場を設けたり、企業も思い切って週1度の“ノー残業デー”を作ったり、月1回の“運動休日”取得を奨励するなどして社会全体が変革を遂げなくてはと思います。あまり運動経験のない人が突然始めると、足やひざを痛めたりすることが多いので、なるべく舗装道路でなく土の上で、と指導しています。楽しみながら歩けるウオーキングコースやプログラムを紹介できるといいですね。

【医学分野】和田高士氏

 特定健診で気をつけなければいけないのは、メタボ基準の腹囲径(男性85、女性90センチ)についても、その周辺の軽い症状の人たちを扱う分には、「改善率」が良くなるだろうけれども、例えば腹囲100センチ以上の人が多かったりすると、「評価」が落ちてくる可能性が高いので、置き去りにされてしまう恐れがないようにしなければいけないと思います。それと数値が悪いとはじめから受診をやめてしまう人がいるのでは、と懸念されます。今回の特定健診は、実践指導を「復習」したりしているかどうか、そのやり方も見守る「家庭教師」付きの制度にもたとえられます。本人のやる気と熱心な家庭教師がいれば、きっと成果が上がるはずです。

【運動指導】宮地元彦氏

 実行委員会が実験的に行った「100(ワンハンドレッド)倶楽部」(腹囲100センチ超の人たちの生活改善支援)の成果(3月23日掲載)をみても、スキルを持った専門家が、ブログなどでもきめ細かく指導していけば、確実に効果が上がることを改めて確信しました。本人がまじめに取り組むことは無論のことですが、指導する側も無理強いせず、できる範囲内での対策情報を提供し、励ましの支援を与えることが必要でしょう。今回は、とても良いパイロットスタディーになりました。

【運動指導】斉藤満氏

 歩くことの運動効果は明らかですが、楽しく歩ける工夫が必要です。今年は、川沿いなどの「歩きたくなる道500選」を企画しています。自然歩道も1つのテーマでゴミを拾いながらの“エコウオーク”なども実行しています。これからも、飽きずに子供たちも参加できるようにと、心がけています。

【運動指導】菅野隆氏

 ウォーキングでは、ひざ痛が起きることが多いです。その改善法として、いすに座り、ゴムチューブを使ったひざ関節の筋トレが効果的で、痛みも解消し高齢者の方などでも、手すりにつかまらないで階段を上がれるような劇的な効果や、糖尿病の神経障害で歩行困難な方でも歩けるようになり、血糖値も改善したとの報告もいただき、うれしい限りです。

【食事指導】鈴木志保子氏

 指導の仕方によっても大きな違いが出てきます。おなかが出て何が悪いのだという人もいますが、健診できっちり問題点を見定めて、体重の軽減でどんな良い点があるのか、教育指導とともに実行に移させていくのが保健指導です。

 また、「行動変容」は難しいという人もいますが、何も健診基準にまで達しないからといって失敗したわけではないのです。本人の10ある問題行動のうち1つの改善でも良いのです。腹囲98センチの方が1センチ減った、あるいは毎年3センチ増え続けていた人が、そのまま数値を維持できただけでも特定保健指導を受けた意味はあったととらえていただきたい。どうも、その辺の特定健診・保健指導の真意がはき違えられていることが残念です。

 「100倶楽部」の指導にもかかわりましたが、その成功例は、食べ過ぎたあとどうすればよいか、本人自身考えられるようになったからです。減量はむしろたやすい。大切なのは、減量したその体重を維持する能力なのですね。つまり、自分をコントロールできるスキルを身につけること、そこまで持っていくのが、真の保健指導でもあるのです。

【食事指導】小野真実氏

 今後、企業でも特定保健指導を受けた社員が食の改善行動を実践・継続する場として「社員食堂」はとても重要です。食事内容も社員の健康度、集団特性などに基づく必要があるでしょう。それには事業者側からの情報提供も不可欠で、そのような協力体制は健康増進法などでも示されています。事業者と健保、健康管理部門、フードサービス部門の関係者が、社員の健康増進に一致して邁進することで、「ヘルシーカンパニー」は実現すると思います。

(2008/04/02)