今年度の第2回メタボリックシンドローム撲滅実行委員会は、昨年10月8日、東京・大手町のサンケイプラザで開かれ、特定健診・保健指導や撲滅運動の課題、今後の方向性などについて話し合った。
参加者は、実行委員長で東京逓信病院内科部長の宮崎滋氏▽実行委員で京都大学探索医療臨床部長の横出正之氏▽三井記念病院糖尿病代謝内科部長の柴輝男氏▽東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授の和田高士氏▽日立健康管理センタ放射線診断科主任医長の中川徹氏▽あいち健康の森健康科学総合センター副センター長の津下一代氏▽兵庫県尼崎市環境市民局国保年金課の野口緑氏▽日本ウオーキング協会企画広報局長の斉藤満氏▽健康創研代表の菅野隆氏▽神奈川県立保健福祉大学栄養学科准教授の鈴木志保子氏▽東京女子医科大学病院栄養管理部の柴崎千絵里氏。(大串英明)
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■標準化と多様性の問題解決へ
◆宮崎滋氏 「特定健診・保健指導の制度はえてして保険者側から語られることが多い。こうした上からの目線ではなく、実際は、日本の国民一人ひとりが健康になるように、つまり病気を見つけたり、病気を治したりする前に、病気にならないようにしようというテーマで進んできているわけです。
これからは、一人ひとりの参加者、受診者が健康になれるようなシステムを作っていかなければいけない。そのためには、今日、いろいろな意見があった中でも、標準化の問題、もうひとつは、一人ひとりどうやってみていくか、多様性の問題などを今後解決していく必要があるのではないか。そういう意味でも、この撲滅委員会の社会的な責任は大きく、周りの方々のご支援をいただいて役割を果たしていきたいと思っています」
■地道な取り組みが功を奏す
◆津下一代氏 「特定健診のあと特定保健指導は7月からスタート。地域の6市町村や職域の企業健保とも連携して、積極的支援など初回支援が終了したところです。市町村も企業も男性の参加が多く、積極的支援プログラムは、市町村では、3、4回の面会、ポイント数でいくと250〜300ポイントと、比較的濃厚なやり方。企業健保についても、詳細問診のためのソフトを開発し、その結果表を見ながら、グループ学習のような形で進めています。
まず、体重の4%減量を目安に具体的な行動計画を作成、毎日チェックシートをつけながら、自分なりに理由を考えさせることが大切。実施者と保健者、会社との信頼関係や実施者の特性に合わせた指導プログラム、共通の教材など指導の標準化を図ることも大事です。データを追跡していると、体重が減るのは、最初の3〜6カ月で、あとは維持できればと思っています。
実は、地元の東浦町では、健診受診率が59%で、保健師さんたちもびっくりしています。積極的支援の該当者には、案内のチラシを直接持っていって説明し、対象者を集める作業をしており、そういう地道な取り組みが功を奏しているのだと思います。また、今までの保健事業と大きく形が変わってきたので、市町村のトップの方々とも話をする機会が多く、メタボを切り口に始まった健診制度ではあるけれども、対象集団の特性を把握しながら、何がうちには足りないんだろうかと、トップが真剣に考えるチャンスとして、この動きをあせらず一歩一歩進めていければいいかなと、思います」
■啓蒙活動の継続が重要
◆横出正之氏 「ある都道府県医師会の関係者からも、国保の被保険者の受診が特に少ないという指摘がありました。出足としては前年の6割ぐらいにとどまっているのかもしれません。いままで近所の人たちと気軽に受診していたのに腹囲が測定されるようになると、逆に恥ずかしいと思う方もおられるようです。これからは保健指導によって体形も改善できるなど、一般の方々が関心をいだくような教育や啓蒙(けいもう)活動を地道に続けていくことが重要で、また、地域との連携も一層求められます。さらに現在、これからも求められると思います。20、30代も明らかに予備群でもあり、こういう方々も含め健診の意義をわかってもらい、多くの方が受診されるように環境を整えるのも当撲滅委員会の使命と思っています」
■リスク高い人に集中指導
◆柴輝男氏 「当病院の健康診断のデータで、動脈硬化を心配して来られた40〜64歳1200人を調べました。空腹時のインスリン値で5つに階層化してみると、一番悪い高インスリン血症の群は、BMI(体格指数)も27ぐらいでちょうど腹囲が90センチを超えて腹部肥満です。人数は全体の約20%でしたが、今回の特定健診・保健指導のやり方ではその2倍の4割ほどがハイリスク群でひっかかります。漫然とやっていては、人数が多すぎて効率的な指導は難しいと考えられます。そこで大事なのは、選択と集中。常に自分の身体に関心を持ってもらい、中でも悪化している人たち、リスクの高い人たちにまず最初に特定保健指導を集中して行い、効率化を図るべきだとも思います」
■着実な歩みに期待
◆和田高士氏 「私どもの施設は健診センターで特定健診・保健指導を行うわけですが、昨年10月に入ってもなかなか保健指導の対象者が集まってきません。どうも出足が悪いようです。全体、この上半期はどうも予想外の状況で、いずれは5年後の目標に向けてぶり返してはくるでしょうが、今後、メタボ撲滅に向けて着実な歩みが出てくれれば、と期待しているところです」
■記録することが大事
◆中川徹氏 「職域での産業医としての立場から見た現状では、定期健康診断がイコール特定健診となるので、受診率は100%ということになります。配偶者などの問題もありますが、今一番の問題点は、健診データを入力する際、厚生労働省が指定した通りのフォーマットになっていないことが多く困難を感じています。初年度なので組合健保の方々も様子見をされているんでしょうけれども、来年度はそうもいかなくなる。昨年10月から積極的支援を始めています。職域の特定健診・保健指導の中で何が大事か、私どもは(1)多様性(2)実行可能なこと(3)記録の3つをキーワードに取り組んでいます。さまざまな方々がいらっしゃる中で実行可能なプログラムを複数用意し、中でも、大事なのは記録するということです。
メタボ撲滅委員会の次のステップは、具体的には、内臓脂肪減量プログラムの提案などです。記録に関しては、3カ月間のコースで朝晩の体重を付けていただく。90日間、毎日記録をとり続けた方は全員なんらかの成功をおさめ、悪くなった方は一人もおりません。だから、記録するということがすごく重要なことだと非常に感じているところです。それほど頑張らなくてもあきらめない仕組みというか、そういう提案をしつつサポートしていくことが重要と思っています」
■有酸素運動の定着支援
◆菅野隆氏 「健康運動指導士として企業、自治体などで健康づくりのお手伝いをさせていただいておりますが、特定保健指導に関しては、初年度なので、まだ進んでいないところも多いようです。しかし、状況に応じた取り組みは確実になされていますので、来年度からは一気に軌道に乗ってくるのではないかと期待しています。メタボ撲滅委員会で原案を作成した運動プログラム『メタボビクス』、『メタボビクス・ウォーク』は、これらの運動を続けた方々から、腹囲や体重が減ったという報告も受けています。とにかくこまめに、少しずつでも身体を動かし、ウオーキングや筋トレなどを自らしたくなるような支援ができればと思っています」
(2009/01/17)