夏の電力不足 最大13%超

5月には国内54基の原発すべてが停止する

電力不足

 東京電力は26日午前0時ごろ、新潟県の柏崎刈羽原子力発電所6号機(135万6千キロワット)の発電を停止し、同日未明から定期検査に入った。東電の保有原発17基が停止するのは、原発設備のデータ改竄(かいざん)問題を受けた平成15年春以来。東電は原発なしで今夏の電力需給を乗り切る計画だが、最大13%超の電力不足になる可能性もある。国内54基のうち、稼働中は北海道電力泊原発3号機の1基だけになるが、5月初めまでには定期検査入りの予定で、国内の全原発が停止する。

 ◆2カ月半で終了

 東電は25日午後2時すぎから、柏崎刈羽原発6号機の原子炉に核分裂を抑制する制御棒を注入し、徐々に出力を下げ始めた。25日午後11時59分に発電をストップし、26日午前1時半すぎに原子炉も停止。東京・内幸町の東電本店の中央給電指令所と柏崎刈羽原発内では25日深夜から、6号機の出力表示が「0」になる状況を報道陣に公開した。定期検査は、約2カ月半で終了する見込み。

 東電の西沢俊夫社長は同日、「当面は安定供給は確保できる見通しだが、無理のない範囲で節電へのご協力をお願いしたい」とコメントした。

 また、福島第1原発事故後も柏崎刈羽の稼働を継続できたことに感謝の気持ちを伝えた上で、「(地震や津波対策など)安全性・信頼性向上に向けた取り組みを着実に進める」として、将来の再稼働に意欲を示した。

 定期検査では、原子炉内の燃料計872体のうち212体を取り換え、津波対策としてケーブルの交換なども行う。福島第1原発の水素爆発事故を踏まえ、原子炉建屋の上部に換気設備も設置する。

 ◆再稼働は「未定」

 原発は13カ月ごとの定期検査が義務づけられ、東電は6号機も通常と同じ作業期間を予定しているが、再稼働時期は「未定」だ。

 東電は柏崎刈羽原発の1、7号機に関し、再稼働の条件になるストレステスト(耐性検査)の1次評価を提出したが、計239カ所の誤りが見つかり、再提出を求められた。

 枝野幸男経済産業相は「(東電に原発運営能力は)現時点ではない」との立場を崩さず、新潟県の泉田裕彦知事も再稼働には厳しい見方だ。

 政府のエネルギー・環境会議が昨秋まとめた東電管内の電力需給見通しでは、猛暑だった一昨年夏並みの需要(約6千万キロワット)が生じれば、供給力(5193万キロワット)に対し、13・4%の電力不足が生じる。

【用語解説】柏崎刈羽原発

 新潟県の柏崎市と刈羽村にまたがる東京電力の原発。全7基の総出力は821万2千キロワットで、1カ所の原発としては世界最大規模。営業運転の開始は1号機が昭和60年で、最も新しい7号機は平成9年。19年の新潟県中越沖地震では、設計時に想定した最大の揺れを上回り、機器や設備の損傷などにより全基が運転を停止した。

2012年3月26日 産経新聞 東京朝刊


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