冬山遭難 民間ヘリ「1分1万円」

捜索費「長期化なら青天井」

捜索費

 ■山岳保険加入1%足らず

 年末年始に山岳遭難事故が相次いでいる。7日までに3人の死亡が確認されたほか、8人が行方不明のままで、各地で捜索活動が続いている。捜索活動に伴う遭難者側の費用負担は、「1分1万円」といわれる民間ヘリのチャーター代などで「青天井」になる恐れがあるが、遭難に対応した保険の加入者はわずかだ。

 警察などによると、一般的に警察や自治体の職員、防災ヘリコプターなどが捜索・救助活動を行う場合は、費用は原則公費で賄われ、遭難者やその家族が負担することはない。

 しかし、警察や自治体だけの捜索はまれだ。一刻も早く捜索・救助するため、多くのケースでは、地域ごとにつくる「山岳遭難対策協議会」に所属する地元山岳会の会員や、民間のヘリコプター会社に協力を仰ぐ。遭難者側はこの費用を負担しなければならない。

 関係者によると民間ヘリの出動費用の相場は「1分1万円」。待機所から救助場所までの往復飛行時間なども費用にカウントされる。

 また救助に当たった山岳会員ら1人当たり1日1万~5万円程度が、日当として協議会から請求される。危険度に応じ危険手当も設定されており、雪崩など二次災害の危険性がある冬山での捜索は夏山に比べ、費用が高くなるという。

 このほか、山岳会員が捜索に使用する消耗品代や宿泊費、食費、遺体で見つかった場合の遺体搬送費も本人や家族の負担だ。登山家で分担金などを出し合い、事故の際には捜索・救助費用を相互扶助する団体「日本山岳救助機構(jRO)」の小日向(こびなた)徹さん(45)は「遭難場所が特定できず、捜索が広範囲、長期間にわたって行われると、捜索費用は青天井になる場合もある」と指摘する。

 jROで設定している費用の補填(ほてん)限度額は330万円。ただ小日向さんは「捜索に10カ月かかったケースもあり、実際は限度額以上の費用がかかることもあるだろう」と推測する。

 登山ブームを受け、山岳事故に対応した保険も登場しているが加入は進まない。日本山岳協会が運営する山岳遭難捜索保険の加入者は平成24年度に5万2345人。国内に1千万人といわれる登山者の1%にも満たない。同会専務理事の尾形好雄さん(64)は「山が危険という意識を持っている人があまりに少ない。保険加入は登山者のマナーだ」と訴えている。

2013年1月8日 産経新聞 東京朝刊


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