オートバイ、若い女性に広がり

リターンライダーも影響

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 危険なイメージが強かったオートバイが近年、若い女性に見直されている。10代女性の普通二輪免許取得者数は10年前と比べて1・2倍に増加した。全国で安全運転講習が開かれるなど、事故を起こさないための取り組みも広がっている。(加納裕子)

スクール盛況

 秋晴れの10月、神戸市中央区の自動車運転コースに、オートバイにまたがった女性10人が並んだ。ヤマハ発動機販売(東京都大田区)が開催した女性ライダー向けのスクール。女性たちはインストラクターに続き、S字や直線のコースを周回していく。

 「小学1年の時からモトクロスの競技をしていて、街でも乗りたくて最近免許を取りました」と大阪府門真市の高校2年、本田七海さん(17)。オートバイに乗っている40代の父親の影響が大きいという。

 10年ほど前に免許を取ったという神戸市須磨区の薬剤師、左近允(さこんじゅう)絢子さん(33)は「乗り始めて世界が広がりました」と目を輝かせる。ツーリングで知り合った男性と結婚。出産してからも長く乗り続けるため、運転技能を高めたいとスクールに参加した。

 ヤマハ発動機のオートバイの国内販売を手がけるヤマハ発動機販売は昨年度、初めて女性ライダー向けのスクールを開催。好評だったため今年度は開催日数を増やした。同社西日本営業所の山口朋章さん(37)は「事故なく楽しく乗り続けてほしい」という。

パパと一緒に

 普通二輪免許取得者は平成17年に26万人を超えて以来減り続けてきたが、昨年再び増加に転じた。特に10~30代で減少が目立っていたが、意外なことに10代女性だけは10年前と比べてむしろ増加傾向にある。

 山口さんは「若い女性は行動力のある人が多い。女子大学生を中心に、かっこいい趣味の一つとして認知されてきた」と分析。日本自動車工業会交通統括部長の太田博喜さん(59)は「リターンライダーの影響が大きい」という。オートバイの人気が高かった1980年代に青春を過ごした世代が40~50代の親世代に。再びオートバイを楽しもうと、娘に勧めて一緒に乗っているというのだ。

 また、若者のオートバイ離れに危機感を抱いた各メーカーが近年、若者向けモデルに力を入れていることも大きいという。こうした効果もあってか、50cc以下を除く二輪車の販売・出荷台数は、昨年は過去5年間で最高となった。

「危険」払拭へ

 オートバイをめぐっては、全国高等学校PTA連合会が昭和57年から「三ない運動」を展開。だが、平成24年からは自転車や歩行者も含めたマナーアップ運動に転換し、前面に掲げることをやめた。同連合会は「オートバイの事故は減少し、自転車の事故が深刻化してきたため」という。

 ただ、危険なイメージは根強い。日本自動車工業会が昨年10月に中学3年~高校3年の子供とその親を対象に行った調査では、「オートバイに乗りたいとは思わない」とした子供の62%が「危険だから」と回答。親の59%が安全運転教育の義務づけを求めている。

 こうしたニーズを受けて日本二輪車普及安全協会は昨年、全国約240校の高校でオートバイの実技指導を実施。大人や女性ライダー向けの安全運転講習も継続的に行っている。同協会は「運転技能やマナーの向上で事故を減らし、オートバイの危険なイメージを変えたい」としている。

2014年10月22日 産経新聞 東京朝刊


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