将来の肝がん防げ

B型肝炎ワクチン、今月から定期接種

 乳幼児が受けるワクチンの定期接種に、今月からB型肝炎が加わった。子供たちが将来、肝硬変や肝がんになるのを防ぐのが目的だ。0歳児で接種するため、早めにかかりつけ医と相談し、他の予防接種も合わせて受けるようにしよう。(平沢裕子)

血液、体液から感染

 B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染により起こる肝臓の病気。HBVの感染は、一過性で終わる場合と、そのまま感染している状態が持続(キャリアー化)する場合がある。持続感染では慢性肝炎となり、肝硬変や肝がんなど命にかかわる病気を引き起こすことがある。日本のHBV感染者は130万~150万人、そのうち10~15%が肝硬変や肝がんとなるとみられている。

 感染は、キャリアーの血液や体液と濃厚接触することで起こる。出産時の母子感染のほか、歯ブラシの共用や傷口からの水平感染がある。済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科顧問で、小児科医の藤沢知雄さんは「HBVはだれでも感染の可能性がある。とくに3歳未満の乳幼児では、感染するとキャリアーになりやすい」と指摘する。

4月生まれは注意

 B型肝炎のワクチンを接種することで、体の中にHBVへの抵抗力(免疫)ができる。将来の肝硬変や肝がんを予防するためには、感染前にワクチンを接種することが勧められる。日本では昭和60年から母子感染にターゲットを絞った事業を実施。キャリアーとなる子供が減少するなど成果を上げたが、母親以外の家族や成人してからの感染を防ぐには全員が免疫を持つ必要がある。

 ワクチンは日本では約30年前から接種可能だったが、これまでは任意接種(計3回接種)で1回につき4千~7千円の費用がかかった。定期接種となることで今後は公費負担となり、自治体にもよるがほとんどが無料で受けられるようになる。

 製薬会社、MSD(東京都千代田区)が8月に実施したインターネット調査では、1~4歳の子供約1600人中、B型肝炎ワクチンを接種していたのは50%。厚生労働省によると、乳幼児の定期接種のワクチン接種率はほとんどが90%を超えており、定期接種になることで接種率向上が期待される。

 定期接種の対象は、今年4月以降に生まれた乳児で、受けられる期間は1歳になるまで。3回接種が基本で、2回目は1回目の接種から4週、3回目は1回目から20~24週をあけて接種する。

 4月以降に生まれた子供で、すでに1回目と2回目を接種している場合、10月以降に接種する3回目の費用は公費負担になる。また、4月生まれで未接種の場合、3回目を1歳になるまでに接種するには、遅くとも10月中に1回目を打つ必要がある。藤沢さんは「3回目の接種時に1歳を超えていると、任意接種となり費用が自己負担となる。1回目がまだの4月生まれの子供は早めの接種を」と勧める。

2カ月に同時接種で

 予防接種法に基づき自治体が行う乳幼児の定期接種はB型肝炎の他に、ヒブ(インフルエンザ菌b型)▽小児用肺炎球菌▽4種混合(ジフテリア・破傷風・百日ぜき・ポリオ)▽BCG▽MR(麻疹・風疹)▽水痘▽日本脳炎-の7ワクチン。日本小児科学会はこれに加え、ロタウイルス(2回接種と3回接種の2タイプ)▽おたふくかぜ(ムンプス、流行性耳下腺炎)▽インフルエンザ-の3ワクチンを推奨している。

 同学会は、B型肝炎ワクチンについて、生後2カ月になったらすぐに、ヒブ、小児用肺炎球菌、ロタウイルスと同時接種で受けるよう勧めている。NPO法人「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子どもを守ろうの会」(東京都中央区)の薗部友良理事長は「1カ月健診が終わったら早めに小児科に問い合わせ、忘れずに受けてほしい」と呼び掛けている。

2016年10月4日 産経新聞 東京朝刊


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