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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>


 編集長からのメッセージ(第79回)

【今月のメッセージ】(平成14年5月1日)

 お元気ですか。

 前回、このメッセージをうっている途中で急用ができ、「イラク戦争は次回にしましょう」と書きました。そのうちにバグダッドはあっけなく陥落し、それ以後はたちまち日本人の関心はイラクから離れていきました。まことに移ろいやすい国民性であります。そんなこともありまして、イラク戦争にはふれないことにします。

 私とても大きな声ではいえませんが、新型肺炎のSARS(サーズ)により関心を抱きました。遠い親戚より近くの他人、じゃなかった。遠い国より近い国。やはり中国や香港のSARS事件は気になります。

 いまSARS事件といいましたが、私にはあれは一つの出来事というより事件のように思えます。それはともかくとしまして、六月号で「中国政府が新型肺炎を隠蔽した本当の理由」という題で原稿を書きました。中国専門家でもなんでもない私ですが、自分なりの感想を述べてみました。シロウトの一つの見方として拙文をご笑覧いただければ幸いです。 さて、いま発売中の六月号には大月隆寛さん(民俗学者)と西村博之さん(「2ちゃんねる」管理者)の対談が載っています。題して「ネット界の暴力デブ太郎とひろゆきが語る『2ちゃんねる』の功罪」。これはぜひネット界の皆さんにお読みいただきたいと思っています。

 この企画の発案は私メでございます。あれはいつでしたか、早稲田界隈の古書店をサーフィンしていたときに井上トシユキ+神宮前.org著『2ちゃんねるーー挑発するメディア』(文藝春秋)をみつけました。パソコンおくての私ですけれど、「2ちゃんねる」というのがずっとひっかかっていました。そも2ちゃんねるとはなんぞや。その程度の知識もありませんでした。

 古書店でこの本の「まえがき」を立ち読みしました。

 「『2ちゃんねる』とそこに集まる連中は、本当に無為無策無能無関心で、『便所の落書き』を書くこと以外に取り立てて生産性のない、ひきこもりがちなくせに粗暴な、コンピュータ・オタクの集まりなのだろうか?」

 「むしろ有為な場であるとか、レベルの高いクリエイティビティがあるということはないのだろうか?」

 「『2ちゃんねる』って、本当のところは、どうなのよ?」

 「なんで、どういう理由で、二百万人とも三百万人とも言われるユーザーが訪れるのよ?」

 この“二百万人とも三百万人とも言われるユーザー”のくだりを目にした時点で立ち読みをやめて、帳場に七百五十円(定価千四百七十六円)を払いました(立ち読み人間の基本エチケットは、最低五回に一回は自分のお金を使うことです)。

 そこで本誌編集部の片岡友理記者にこの本を渡して、「2ちゃんねる」に関する企画立案を頼みました。したがって大月さんとひろゆき君の対談企画そのものは彼女のアイディアです。

 ゲラでこの対談を読み、仰天しました。インターネットの巨大匿名掲示板「2ちゃんねる」の一日のヒット数が三千万だというのです。たとえ無為無策無能無関心派のトイレの落書きにすぎないとしても、これはただならぬ数字です(ウ〜ン。片岡クン、ウチのホームページは一日二万ちょっとなんだろ。大月さんちだって八万だよ。なんとかならないの?)。

 世界を天駆ける「2ちゃんねる」は、とんでもない巨大メディアじゃございませんか。まあ、いろいろ問題も多いようですけれど、関心のある方はぜひ、ぜひ(「2ちゃんねる」じゃございません、「正論」のほうを)。大月さんがシロウトのために懇切ていねいな注釈をつけてくれました。ネット界の暴力デブ太郎サン、感謝します。

「正論」編集長 大島信三

 「正論」平成15年6月号 編集長メッセージ



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