お元気ですか。
小泉改造内閣が発足し、いよいよ総選挙です。それにしても安倍晋三官房副長官の幹事長就任には驚きました。小泉純一郎首相の発案なのか、それともだれかに入れ知恵されたのか、とにかく意表をつく人事でした。
抜擢人事は大企業でもときどきみられます。しかし今回の安倍幹事長のケースに匹敵するような例は、少なくとも大企業ではまだありません。役員どころか、部長にもなっていない社歴十年の課長がいきなり代表権もある副社長になったようなものです。
「官房副長官が大企業の課長クラス」という物言いには異論もあるでしょう。たしかに近年、首相官邸の政治権力がとみに強まっています。必然的に官房副長官の存在感も重みを増しています。ただ、官房副長官というのはそのポストに座る人によって政治力にばらつきがあります。首相との緊密性に左右される面があります。小泉首相との距離が近かった安倍官房副長官はそれなりの影響力をみせました。しかし、もう一人の政務担当官房副長官のほうは名前も思い出せません。そもそも官房副長官は制度的には省庁間の調整役としては期待されているけれど、実質的な権限はいわれているほどにはなく、いってみれば官房長官の補佐役にすぎません。
その点、自民党の幹事長はだれがなろうと、制度的に強大な権限を行使できるポストです。資金と人事で所属議員、全党員に睨みをきかせるのですから、大変な権力者です。ここでいう人事にはいうまでもなく、選挙の公認権が含まれています。もちろん、いかに制度的には権力保持者といっても、その任につく人物が凡庸であれば、その権限が大幅に制約されるのは当然ですが、常識的に考えても一騎当千の政治家を束ねる幹事長に凡人が選ばれることはまずありえません。
いうまでもないことですが、日本は議院内閣制をとっています。ひとことでいえば、政府というのは議会の承認がなければ成立しないということです。要するに議会で多数を占めた政党が政府をつくる。こんなことは賢い子なら小学生でも知っている常識です。
ところが、メディアはことさらに「官優位」を強調しています。官主導の面は否定できませんが、「党優位」もまた厳然たる事実です。官僚はしばしば「党のご意向は」といった言い方をします。この場合の党というのは自民党です。官僚政治といっても重要案件は政権党の承認なしには何ひとつ決めることはできないのです。したがって、自民党幹事長というのは政府・連立与党の実質的なNO.2ということになります。
ところが意外なことに、「安倍さんは大臣になったほうが力を発揮できるのに」という声が聞かれました。政治にうとい人がもらしたので世間一般の印象ではありませんが、ああ、まだそういう人がいるのかと、昔、大学の同級生(現在県議)に聞いた話を思い出しました。
彼は大平正芳代議士の秘書でした。大平さんが幹事長になったとき、地元の支持者のなかに、「うちの先生は大臣になれなかった」といって、がっかりした人たちが少なくなかったというのです。
「末は博士か、大臣か」
そういわれた時代がありました。いまでは博士といってもあまり尊敬されないようですが、大臣のほうはやはり希少価値があるようです。ともあれ留任大臣、新任大臣の健闘を期待しましょう。
「正論」編集長 大島信三
| 「正論」平成15年11月号 |
編集長メッセージ
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