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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>


 編集長からのメッセージ(第87回)

【今月のメッセージ】(平成15年11月1日)

 お元気ですか。

 日が暮れるのが早いですね。まだ午後五時前だというのに大手町の十四階のオ フィスからみえる外界は闇につつまれています。真下が読売新聞社、その先に皇 居、そのまた先に新宿の超高層ビル群が昼には一望できたのに、いまは辺りがぼ んやりとしてわが身まで異界のなかに浮遊しているようです。

どんな天変地異がおきようと、一日二十四時間は微動だにしないのはわかって いるけれど、日暮れの速さに一日が短縮されたような錯覚を感じます。ふと窓か ら下を覗くと、おやおや道行く人が傘をさしている。そこで初めて、ああ、外は 小雨が降っているのだな、暗くなるはずだと気づくのです。小雨の姿や音ではな く、傘で間接的に雨降りを知る。これも大都会の高層ビルに棲息する住民の生き 方のひとつなのでしょう。

大雨はいやですが、小雨には風情があります。許容範囲の天候です。傘をもっ ても寄り道したい族が少なくありません。でも、今晩は居酒屋にもパチンコ店に も寄らず、まっすぐ帰宅しましょう。家人の機嫌も上々。日本酒の熱燗よし、 チュウハイよし、缶ビールよし。食事を終えたら、ここで思い切ってテレビを消 して、雑誌か本を読んではいかがですか。どうせあなたのテレビは視聴率に関係 ないのですから、日テレのうらみをかうこともないのです。

 雑誌なら『正論』を読んでほしいですね。いつもインターネットでつまみ食い している皆さん、たまには書店で実物を手にして下さい(六百八十円ですけれ ど)。

 つまみ食い、というよりつまみ読みと言い換えましょう。これは私も嫌いじゃ ないのですが、それだけの読書人生はあまりにもむなしい。「読書人は余裕をも たなければいけない」、なんて粋がっていうほどの読書家ではありませんが、実 物を手にしてゆっくりと活字の世界に没頭したいですね。

真新しい雑誌を買って、まずしばし目次をながめる。あるいはイのいちばんに グラビアをひらく。ひいきのコラムから読む。複数の知人は、『正論』は私が書 く編集後記から読むそうですが、どうやら書店での立ち読みらしい。それでも、 嬉しいですね。読み手をもたない書き手なんて様になりません。

ある大学教授と社会科学系統の学術誌について話しました。学者先生の論文は ほとんど読まれません。だれが読むのでしょう、本人と奥さんとお弟子さんの三 人ですかな、とつぶやきました。大学教授がすかさずいいました。

「旦那の論文を読むカミさんなどいませんよ。そんなことより、最近は弟子す ら読まなくなっているんですよ」

 また、窓から外をみると、雨が肉眼にはっきりととらえられました。雨よ、 もっと降れ。そのかわり明日は晴れてくれ。秋晴れの休日に読書。これぞ人生の 至福のひとときじゃありませんか。

「正論」編集長 大島信三

 「正論」平成15年12月号 編集長メッセージ



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