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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>





日教組教研集会への職務参加は違法(1)
この画期的判決を忘れるな



神奈川県鎌倉市議会議員 伊藤怜子


兵庫県教委が虚偽答弁!?

 なぜ教育の世界では、嘘、詭弁、ごまかしがまかり通るのか。昨年末、文部科学省を訪れた帰り、私は暗然たる思いにとらわれていた。訪問の目的は、昨年十一月に兵庫県議会でなされた県教委の答弁内容が事実かどうか確認することだった。私はその答弁に、どうしても納得いかないものを感じていたのである。

 昨年十月二十日、横浜地裁で、私が起こした一件の訴訟の判決が言い渡された。訴えた相手は、日教組傘下の神奈川県教職員組合(以下、神教組)の主催で平成十一年十一月十一、十二の両日、川崎市で開かれた教育研究集会(教研集会)に参加した鎌倉市立小・中学校の教員七人。任意団体に過ぎない教組の教育研究集会であるにもかかわざす、彼らは出勤と同じ扱いとなる「研修扱い」で参加することが認められ、参加時の給与も通常勤務と同じように受けとっていた。私は、その給与を県に返還するよう求めていたのである。

 判決の概要については、すでに報道されてご存知の読者も多いであろう。判決は私の請求を棄却したものの、判決理由では、組合主催の教研集会は組合活動の一環であり、研修扱いでの参加を校長が承認したことは違法であるとされたのである。

 日教組の教研集会は毎年一回、全国の市・郡などの地域単位、都道府県単位で開かれている。各都道府県から選ばれた代表らが集まる全国教研もある。かつては平日の授業時間中に開かれ、集会に参加した教員の授業は自習となる事態が各地で続出した。さらに、教研集会への参加は「研修扱い」=「出勤扱い」とされ、子供たちを放ったらかしにしていた教員に、その間の給料が支払われることも常態化していた。まさに「学校の常識は世間の非常識」と言われる類の悪しき慣行の一つであったが、教職員組合と馴れ合った教育委員会や校長たち学校管理職が、それを認めてきたのである。

 横浜地裁の判決は、公教育の現場を長年歪め続けてきたこの馴れ合い体質を痛烈に指弾する司法判断であった。

「これで、長年の悪慣習も一掃されるはずだ。教育委員会や学校管理職も組合との癒着を反省し、襟を正すきっかけになるのではないか。裁判自体には負けたものの、これは実質勝訴ではないか」

 私はこう考えて控訴を断念し、判決は確定した。しかし間もなく、自分の期待が甘かったことを思い知らされた。

 近年、教育正常化の流れが定着し、教研集会は勤務時間外、あるいは授業時間終了後に開催されることが多くなってきた。しかし、全国各地の実態までは分からない。いまだに授業時間中に開催している地域があるかもしれない。判決から約半月後の昨年十一月七、八の二日間(金・土曜日)にわたって開かれた兵庫県教職員組合(日教組傘下)主催の教研集会も、そうだった。

 そこで、同月十七日の県文教常任委員会で、森脇保仁県議が横浜地裁の判決にからめて教研集会に参加した教職員の勤務状況について県教委を質したのであるが、取り寄せて読んだその議事録に、私は驚かされた。答弁にたった県教委教職員課長によれば、「文部科学省は、教育研究集会のすべてが組合活動で承認研修(研修扱い)とすることが違法であるとはしておらず、その(研修扱いとするかなど)服務のあり方については現在(文科省と)協議している」のだという。

 そんなバカな。文科省は横浜地裁の判決に従わないのだろうか。どうしても納得できず、私は文科省を訪れた。そこで聞いた担当者の答えは、私をさらに驚かせた。「兵庫県教委に(すべてを承認研修とすることが違法であるとは言えない云々の)話はしていないし、県教委と協議をしている事実もない…」。県教委の議会答弁の全否定である。

 私には、兵庫県教委と文部科学省の言い分の食い違いについて判断する材料はない。ただ、兵庫県では一昨年来、学校内での校長権限をしばる確認書が組合と教育委員会の間で交わされていたり、授業時間が大幅に短縮されていたりと、組合と教育委員会の癒着体質が表面化していた。教研集会にも教職員を研修扱いで参加させていたため、文部科学省から指導を受けていた。

 長年、教育正常化に取り組んできた中で、教育関係者のごまかしや事実隠蔽には慣れてはいる。しかし、議会の場で、議員の質問に対して偽りの答弁までするのだろうか。文部科学省の言っていることが正しければ、議会制民主主義の否定である。議員という職にある者の一人として、なんともやり切れない気持ちにさせられた。

 兵庫県の研修の実態はいまなお不明であるが、この問題が県議会で取り上げられたこと自体、横浜地裁の判決の効果ということもできる。全国の教育正常化に少しでも寄与することを願いつつ、十二年十二月の提訴以来二年八カ月にわった横浜地裁での裁判と判決の内容を紹介したい。


 【略歴】伊藤怜子氏 昭和二年(一九二七年)生まれ。山脇高等女学校卒。平成元年、鎌倉市政の肥大化、放漫、馴れ合いに我慢できず、行政改革を公約に市議選に出馬し、当選する。現在四期目。一環して行財政改革と教育問題に取り組む。

 「正論」平成16年4月号   論文



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