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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>





呆れた自治体「男女共同参画」行政の暴走 II
拉致被害者家族の講演を「反動」呼ばわりする
大阪・豊中市の参画センター
(1)




本誌・小島新一


「行政による人権侵害!」

「『特定勢力』『攻撃』『反動』という言葉が並んでいて、一見してどこかの政治団体の文書かと思いました。ところが、市設立の財団法人という公共団体が作成したと分かって、呆れましたね。市民の抗議を『攻撃』『反動』だとレッテルをはる姿勢からは、自分たちだけが絶対的に正しく、反対意見を持つことは許さないという偏狭さが伺えます。市民を一方的に敵視しているとしか思えません」

 こう話すのは、大阪府豊中市の北川悟司市議。北川市議が問題にしているのは、豊中市が一〇〇%出資して設立した「財団法人とよなか男女共同参画推進財団」が平成十四年十二月四日付で作成した文書である。

 各地で自治体の男女共同参画政策が問題になるなか、北川市議によれば、「豊中でも財団が運営する男女共同推進参画センターで事実婚や夫婦別姓を奨励していると思えるような事業が行われていて、市民から抗議や批判の声が上がっている」といい、問題の文書は、こうした市民の抗議活動などを紹介している。まずは文書を読んで頂きたい。「すてっぷ」とは、男女共同推進参画センターの名称である。

〈件名〉豊中市とすてっぷへのバックラッシュ(ある勢力の攻撃)

〈メッセージ〉

 日頃のご無沙汰をお詫び申し上げます。

 男女共同参画に対するバックラッシュ(ある勢力の攻撃)が激しくなっております。特に条例制定を目指す自治体への抗議、要望、宣伝活動などの動きについては、お聞き及びかと存じます。

 豊中市は、今年(註:二〇〇二年)3月条例が必要との審議会答申をいただき、来年3月の市議会への条例議案提出に向け準備をすすめています。こうした中、夏ごろからバックラッシュの動きが見え始め、現在ではかなり顕著になっています。「市民」を名乗っていますが、特定のグループに属したきわめて組織的活動と考えられます。

(中略)

 すてっぷは豊中における男女共同参画の拠点施設という位置付けであり、運営している私ども財団に対する攻撃も今後ますますエスカレートすることが予想されます。これまで財団事務局内で、豊中市人権文化部(女性政策課)と相談しながら毅然と対応してまいりました。しかし、この状況では、役員である理事・監事、また評議員の皆様になんらかの形で影響が及びかねないと懸念しております。

(以下略)

 文書は続けて、「バックラッシュに関する動き」を列挙している。一部を抜粋する。

2002/07/08

Mさん(男性)が来館、「ジェンダーフリーの危険性を学ぶ」という主旨の勉強会をするので部屋を借りたい

2002/10/05

「救う会・大阪」主催の「拉致された有本恵子さんらの人権を考える勉強会」

2002/10/25

豊中市議会決算委員会で新生とよなか所属の北川悟司議員が「すてっぷ情報ライブラリーの選書」などについて質問。

内容:女性問題審議会の構成と人選方法について;ライブラリーに家族を崩壊させたりフリーセックスをすすめるひどい本が多いが、選書は誰がしているかなど

2002/12/03

「『男女共同参画』を考える豊中の市民の会」が豊中市役所前で街宣活動(ちらし撒きと演説)

 文書の最後には、すてっぷ館長の三井マリ子氏による「バックラッシュ」という言葉の解説が付けられている。「そもそもは『反動』という意味。ここでは、女性の地位向上・男女平等推進を阻み、伝統的性役割を固持しようとするある特定勢力からの一連の動きをさす」としたうえで、「アメリカ社会の女性解放運動に対する攻撃がいかに組織的だったかを克明に描いた」著作の題名から広まった用語であり、「男女平等推進を阻止する反動の波がバックラッシュと呼ばれ始めた」のだという。

 豊中市の説明によれば、文書は、財団の山本瑞枝事務局長が作成し、財団の理事・監事・評議員の約三十人に送った「内部文書」。ところが、昨年十一月、「『男女共同参画』を考える豊中の市民の会」のメンバーが知人から文書を見せられ、財団の関係者以外にも出回っていたことが発覚したのである。

 文書で名前の挙がった「救う会・大阪」「『男女共同参画』を考える豊中の市民の会」代表の朝生万里子氏は、「文書には、抗議活動をしている人物を容易に特定できる記述もあります。『内部文書』と説明されましたが、財団の理事や評議員の大半は外部の有識者らで、私たちは、その段階で個人情報が外部に漏れたと受け取めています。公的な文書ですから私たちが『反動的』な危険人物だと第三者に受け取られかねない。日頃盛んに男女の人権の尊重を言っている行政から人権侵害を受けたようなものです」と話す。さらに、「抗議とは関係のない救う会の講演会まで『攻撃』『反動』とは理解できません」と憤慨する。

 救う会の講演会とは、文書で「バックラッシュ」の一つとして挙げられた「有本恵子さんらの人権を考える勉強会」のこと。北朝鮮が拉致したことを認めた有本恵子さんの母親の嘉代子さんや増元るみ子さんの弟、照明さんらが講演した。「市民の会」のメンバーは、PTA活動などを通じて知り合った専業主婦らが大半という。

 財団の山本事務局長によれば、「理事や評議員が抗議の動きを知った時に『何も知らなかった』では済まされないため、市役所前でのチラシ配りの直後に作成しました。急を要するので大半はファクスで送りましたが、本来は郵送するか直接手渡すべきでした。また、外部の方に見せないよう断らなかったことも軽率でした」という。

 ただ、市民の抗議活動などを「バックラッシュ」としたことについては、「主観的で誤解を招きかねなかったかもしれません」としながらも誤りだったとは認めず、拉致講演会については、「主催者が抗議活動をしている人物でもあるため列記しました。拉致事件は重大な人権問題だと考えており、救う会の活動を批判するつもりはありません」という。


 「正論」平成16年5月号   論文



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