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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>





フェミニズム条例を一掃しよう!(1)
フェミニズムという偏向思想に色づいた男女共同参画条例を正常化するための提言



「日本時事評論」編集長 山口敏昭


 全国の地方自治体で雨後の筍のように制定されている男女共同参画条例。その制定過程で主導権を握っているのが「懇話会」「審議会」「検討会」などと名乗る検討機関である。議会の議決を得て条例で設置される首長の付属機関としての審議会もあるが、多くは行政内部の要綱などで設置する、いわゆる首長の私的諮問機関に過ぎない懇話会(審議会や検討会など名前は様々だが、以下「懇話会」で統一)である。

 懇話会が、「お互いに打ち解けた雰囲気で、なんらかの問題について話し合う会」(三省堂・新明解国語辞典)なら問題はない。しかし、“住民の代表”を装ったフェミニストの隠れ蓑となり、その意見を行政や議員が無批判に鵜呑みにする傾向があるから困る。それが、「市民参画」という聞こえのよい掛け声に隠れた議会軽視であり、地方自治の基本をも逸脱しかねないという問題意識はほとんど皆無である。

 懇話会の答申はあくまで参考資料であり、民意は議会によって反映されるべきだ。それだけ議員の役割は大きいし、間違いがあれば是正をしていく必要がある。懇話会任せの条例制定の危うさを福岡市の事例で明らかにしながら、最後にフェミニズム条例正常化の処方箋を示したい。

危険な懇話会任せ

 政令指定都市としては最後発となる男女共同参画の条例を今年三月の市議会で制定した福岡市も、ご多分に漏れず、市の内部要綱で男女共同参画推進懇話会を設置した。さらにその中に、条例の内容を協議する条例検討部会を置き、条文をどうするか事細かに協議して提言書を市に提出した。本来、条例をつくる権限は住民によって選ばれた議員からなる議会にあり、発案権は議員もしくは首長だけにある。条例がその地域の住民の権利を制限し義務を課す法律と同じ効果をもつものだけに、軽軽に扱うべきものではないからだ。それを、一諮問機関・任意機関でしかない懇話会が実質的に決定してしまうのは、法の趣旨に違反(=地方自治法違反)する、まさに「分不相応」の行いなのである。ところが、市民の大半、さらに議員さえも、懇話会の提言書を侵してはならない神聖なものであると誤解し、一時は極めて偏向した提言書の内容そのままの条例案が議会に提案される運びになっていた。

偏ったメンバー構成

 福岡市では、平成十五年一月十日に、市長が同市男女共同参画推進懇話会に「男女共同参画を推進する条例の基本的事項」について審議を依頼した。懇話会は、条例検討部会を設けて一年間の協議を経て、今年の一月七日に提言書をまとめて市長に提出した。これを参考に市が条例案をまとめるのだが、そもそも条例検討部会での審議は、市民の意見など端から念頭には無く、フェミニズム思想をいかに条例に盛り込むかに終始した。

 なぜそのようなことになるのか、懇話会委員の人選を見ると明らかになる。「学識経験者、地域及び市民団体の代表、並びに民間企業等から幅広く就任」(永松正彦・福岡市市民局長)してもらったことになっているが、人選の偏りは尋常ではない。条例検討委員十人(男性三人、女性七人、後に一人欠員)のうち、市民代表として入っている三人の女性は、いずれも「福岡市に男女共同参画推進条例を作る会」(以下、「作る会」)の共同責任者である。

 実は、懇話会が発足した平成十五年一月時点では、三人のうち一人だけが委員であったが、その後に「作る会」が正式に発足し、その時の発起人代表の「北京JACふくおか」「福岡市女性翼の会」「福岡市七区女性協議会」の三団体の代表三人が「作る会」の共同代表を務めることになったため、条例検討委員の枠を二人増やして、三人とも委員に就任したのである。

「作る会」は、市内の九十一団体が参加して発足したが、発会式当日は意見が百出で、統一見解や大会宣言をまとめることができないまま、「各団体は、それぞれがそれぞれによい条例をつくるために対応してください」(世話人)ということで閉会となった。その後、「作る会」主催で三回の講演会を開いているが、加盟団体でも案内すらないところもあるなど、一部の役員により恣意的に運営されているとの批判が噴出している。

 統一見解すらまとめられないこの団体から三人も条例検討部会の委員に就任させなければいけない必然性はどこにあるのか。しかも、懇話会は別に「女性センターのあり方検討部会」があるのだから、三人ともが「条例検討部会」に入るのはいかにも不自然だ。福岡市議会で平成会の高山博光市議(保守系)が「条例検討委員の人たちが偏っている」と指摘したのも当然である。

 そして、三月十九日の第二回条例検討部会では、市民の意見発表者会を持ったが、発表者の人選も不透明そのもの。「市政だよりとホームページ等で意見募集をして、応募のあった三十人から、男女比、年齢構成、意見内容等のバランスを勘案して選考」(事務局)したとはいうが、発表をした六人中四人までが、条例検討委員の関係者で占められていた。つまり、前述の「北京JACふくおか」「福岡市女性翼の会」「福岡市七区女性協議会」の各団体メンバーと、委員である大学教授のゼミの学生という顔ぶれであった。

 人選問題だけでなく、二月七日の初部会で提示された資料『男女共同参画社会基本法と条例制定時の論点について』に、基本法とは別に“モデル条例”なるものが明示されたことからも、条例検討部会の結論が最初から決まっていたことが歴然としていた。“モデル条例”なるものは、「(株)ぎょうせい」という出版社から出ている『男女共同参画推進条例のつくり方』(以下『つくり方』)からそっくり抜き出したものなのである。『つくり方』の著者は、全国の都道府県の先陣を切って条例を制定した埼玉県の「条例検討委員会」の委員だった山下泰子、橋本ヒロ子、斎藤誠の三氏である。山下、斎藤の両氏が、フェミニストの政策集団とも言える北京JACの正副代表であることからも、フェミニストのための条例制定の意図が分かる。

 埼玉県といえば、その条例に基づいて設置された苦情処理委員が、男女別学の公立高校に対し、歴史や伝統さえも無視して共学化を一方的に勧告、これに反発した保護者らがわずか三カ月で二十七万人の共学化反対の署名を集め、生徒代表らも反対決議文を知事に提出して、県教委が「別学維持」を決めて勧告を退けるという、お粗末な顛末を演じたことで知られる。『つくり方』でも、「基本法だけでは不十分」「市町村でも条例が必要」などと、基本法の逸脱と過激な条例の制定を煽動している。

『つくり方』は、政府・行政機関の監修によるものではなく、単なる民間の著書の一つにすぎないことはもちろん、フェミニストによるフェミニスト条例制定の“指南書”“教科書”なのである。それを「モデル条例」と称してはばからないのだから、市民をバカにしている。


 【略歴】山口敏昭氏 昭和三十四年(一九五九年)、山口県生まれ。山口大学経済学部卒。週刊『日本時事評論』編集長。男女共同参画や原子力立地を主に担当。同紙は昭和四十年代から官公労の違法スト問題追及や教育正常化の運動理論を発信し、国鉄民営化、教師の資格審査導入、原子力平和利用、憲法改正などを訴えてきた。

 「正論」平成16年6月号   論文



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