あやうく、あれが“遺影”になるところだった。会社の友人とランチを食べた帰りのこと、携帯電話の話になった。彼女の部署では、携帯電話を利用した新サービスを始めたところだ。
産経新聞をお読みの方は、お気づきだろうか。2センチ四方くらいの大きさで、変な迷路みたいな模様が紙面に刷られている。二次元バーコード「MSマーク」というものだ。これに携帯電話をかざして読み取ると、ホームページのアドレスが自動的に取得でき、「着メロ」やテレビ番組サイトの情報など、さまざまなコンテンツを楽しめるらしい。
すでにスタートした産経新聞、フジサンケイ ビジネスアイなどの新聞のほか、雑誌「正論」にも登場予定だ。
らしい、というのは対応する携帯電話の機種がまだ限られており、実際に試したことはないからだ。というより、私の携帯電話は通話のみで、写真を撮ることはおろか、メールもできないから論外なのである。
人の携帯を取り上げ、「今どきこんなのを持っている人がいるなんてー」とはやしたてる友人。同じ部署の人に見せてあげたい、と持ち主ともども、彼女のカメラ付き携帯で記念撮影をさせられた。笑われても、まあ、別に嫌な気分にはならない。昔から、私は「物持ちがいい」と親に褒められてきたのだ。
数日後、ふと気付くと携帯の画面表示が消えていた。電源が切れたのかと思い、ボタンを押すと復活する。だが、しばらくたつとまた消えている。繰り返すうちに、押しても表示が出なくなった。
ついに壊れたか。8年ものである。職場で強制的に携帯を持たされて、文句を言っていたのだが、今ではないと困る。あまりにも笑い者にされたから、機械がへそを曲げてしまったようだ。
翌日、思いついて卓上電話から、自分の携帯に電話してみた。すると、着信音が鳴るのである。今度は携帯から卓上電話にかけたら、表示画面は暗いままだが、ちゃんと通じる。
当面、私の必要とする機能は生きている。カタログや量販店の店頭で物色して、「話せりゃええやん」というCMの会社の、カメラが付いていない機種を買う心積もりをしていたが、慌てなくてもよさそうだ。それとも、これを機に買い換えようか。
「本当はメールだって必要ないんだけどね」。そう言ったら、「そんな頑ななことを言っていると、年をとってから困るよ」と諭された。
確かにそうだろう。先日、テレビで高齢者のための携帯電話入門をやっていた。「短縮番号を登録してみよう」など平易な内容で、私ですらできるようなことだ。しかし、年を取ったらどうだろう。もともと機械は苦手だし、携帯の機能は進化し続け、年齢とともにどんどんハードルは高くなる。置き去りにされないよう、周回遅れでもついて行かないといけないのかもしれない。
携帯が誕生して今年が25年だという。最先端の第三世代携帯は、テレビで録画した動画を携帯で見たり、ボイスレコーダー、ラジオやナビゲーション、さらには定期券やデビットカード機能まで加わってくるという。利用できる環境にあるという前提で、サービスが開発され、世の中が動いていく。「MSマーク」にしてもその一つといえよう。
異変から半月、電源ボタンを押してみた。なんと、普通に画面表示が出る。3日たっても異常はない。ひとまず、携帯は機嫌を直したようだ。買い替えは延期、携帯ライフの見直しも先送りである。
「正論」編集部・永井優子
| 平成16年6月1日 |
Web版「正論」コラム
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