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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>



今月のメッセージ(第96回)(平成16年8月1日)



 お元気ですか。

 暑いですね。でも、猛暑と冷夏のどちらを選ぶかといわれたら、迷うことなく猛暑のほうをとりたい。夏は暑く、冬は寒い。これが春夏秋冬にメリハリのある国の自然の摂理だと思います。常夏の国というのは、それはそれでけっこうなものでしょうが、そこに長期滞在したとき、果たして永住する気持ちが起きるかどうか、これはわかりません。

 灼熱の日々ですから休日も家に居てテレビを観ています。平日の朝、気に入った番組をビデオに予約して出勤し、休日にまとめて観ています。録画のなかにはもちろん映画も多いです。

 七月下旬の日曜日は、中国の張芸謀(チャン・イーモウ)監督の文芸作品を続けて二本も観ました。張監督といえば、アクション映画「HERO(英雄)」を思い出す人が少なくないでしょう。しかし、張監督のアクション映画は「HERO」が初めてで、本来は文芸畑の人ですね。

 七月十六日には最新作「LOVERS」が中国で公開され、大評判とか。ハリウッド映画も顔色なしの興行収入だそうで、中国の勢いは映画界でもなかなかのものです。日本では八月二十八日に公開されるそうで、楽しみにしています。

 私がビデオで観た二本というのは七月にNHKの衛星放送で放映した「初恋のきた道」(2000年)と「あの子を探して」(1999年)です。ご覧になった方もいらっしゃるでしょうが、どちらも中国の内陸部の貧しい農村が舞台です。はしなくもここでは中国の暗部があぶりだされています。

 「初恋のきた道」は都会から赴任してきた二十歳の教師に恋する十八歳の娘が主人公です。娘は若い教師のために心をこめてキノコ餃子をつくります。しかし、若い教師はその餃子を食べることもなく、「右派」とみなされて町に連行されます。これで時代が文革期だったことがわかります。彼女は町へと続く一本道の傍らにたたずんで彼を待ち続けます。

 「あの子を探して」もまだ十代のあどけない代用教員の少女がヒロインです。彼女は、家が貧しいため奉公に出された小学生の男の子を探し出すため町へ出かけます。町へ行くバス代もない代用教員でしたが、とにかく見つけて連れ戻そうという一念で走り回ります。

 どちらの少女も行動派で、自分の気持ちを率直に表し、目標に向かって全身全霊を打ち込んでいきます。昔、まだ、日本の農村が貧しかった頃、このように健気(けなげ)でバイタリティーに富む少女がいました。張芸謀監督の文芸作品は、中国の若い女性に人気があるそうです。中国でも映画のヒロインのような少女が珍しくなったのでしょう。

 ところで、中国の内陸部の農村は「三八六一九九部隊」で成り立っているといわれています。これは婦人、子供、老人を指す言葉とか。中国では三月八日が婦人の日、六月一日は子供の日、旧暦九月九日は敬老の日なんだそうです。このことは李昌平著、吉田富夫監訳『中国農村崩壊――農民が田を捨てるとき』(NHK出版)で知りました。

「正論」編集長 大島信三

 「正論」平成16年9月号 編集長メッセージ



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