
1910年頃 油彩、キャンバス 114×162センチ
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どこかにありそうだけれど、どこにもない森。しかし確かに、植物の濃密な香りや葉叢から漏れる光すら運んでくる森。
素朴派のアンリ・ルソー(一八四四−一九一〇)がパリの植物園に通ってスケッチを描き続け、そのイメージをもとに熱帯の密林を主題にした一連の絵を描いたことはよく知られている。これは最晩年、一九一〇年ごろの優品。単純化された葉、オレンジが幻想の森を生む。東京都現代美術館「花と緑の物語展」(九月二十六日まで)で見ることができる。
ところでこの展覧会は、近代フランスを中心に花や木の絵を集めたもの。コローからルソーらにいたる作品を追ううち、近代人にとって「自然」は、あこがれや追慕の対象だけでなくほとんど格闘の対象ともなっていったとわかる。都市化が進み人間が単純には自然とともにありえなくなったとき、画家は苦闘して自然を再構成した。ルソーにとっても、どこまでも理想郷としての夢の森だった。
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