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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>



11月号



「頑張らない介護」にはほど遠く

主婦・飯沢春美(大田区・51歳)

 最近「頑張らない介護」という声を聞くことが多くなった。介護保険制度が発足してからは介護サービスを利用することにより、介護する側の負担が軽くなるのはなによりだと思う。だが介護される側がサービスを拒否する場合がある。ケアマネージャーも頑として拒否していれば強制はしない。私が母の介護を三年間やってみてわかったことだが、「あまり頑張らないで」と言われても「やるしかない介護」だということだ。

 独り暮らしの母が脳梗塞になり不自由な体になってからは、仕事を辞めて通いの介護を始めた私。当然「おもいやりの介護」のはずだった。しかし身内も寄りつかないほどの頑固さとわがままを持っている母は介護サービスを拒否。身内の助けもなく毎日通う私は母との葛藤に、自転車で片道三十分の帰宅途中は泣く日が多い。母に手を上げそうになる気持ちをアルコールで紛らしたり、一度手を上げたら歯止めが利かぬとカベに当たる私の顔は鬼の顔。

 何年待っても入所できない区内の特老の施設。ならば区外でもと私は悩みつつ申し込んだ。この三年間で三回も脳梗塞の発作で体の不自由さと頑固さが増した母に、私自身は身も心も限界が来ていた。

 数カ月前だが、片道電車にて三時間ほどかかる施設に入所できた。月一回の面会に「犬畜生扱い」「捨てられた」と胸にグサリと来る言葉を投げかけてくる母。理想とはほど遠い介護現場。車イスの生活を強いられ、トイレもままならぬのでオムツの中へが多い。仕方がない、職員が少ないのだから。三年間の介護から解放されたが、母の言葉が重くのしかかって気が重い。

性教育の誤り

教員・加賀 義(長崎市・36歳)

 近年、女子高校生などの性体験率を調査すると、三割から五割近くという結果が出る。望まない妊娠や性病が深刻な問題となっているが、これは教育者の考え方に誤りがあるように思えてならない。

「女子は恋愛が始まると、女が男につくす古い恋愛パターンに陥りやすい。だからコンドームをつけてくれと言いにくい。性行為をするのはいいが、男女の対等な関係や自立を基盤にした避妊教育の実践が大切だ」。これが現在の養護教諭などの典型的な考え方である。ここにこそ間違いがあるのではないか。

 高校生などの性体験率は女子の方が男子より高い。それは当然で、十代の女子がその気になれば、出会い系サイトや繁華街などでたやすく相手が見つかる。そして性病をうつされたり、妊娠したとたんに捨てられたりする。そうでなくても、欲情のままに無軌道な性行為にのめりこむことで、心は確実に汚れていく。

 米国では近年、それまでの行き過ぎた性の解放による性病の猛威や家庭崩壊への反省が起き、婚前交渉の自制を教える純潔教育が推進され、成果を上げている。日本の学校では現在、男女の問題についてほとんど教えないが、教師、特に税金で教壇に立っている公立校の教師は「セックスをするのはいいけど避妊は大切だよ」といった、妙にものわかりのいい、無責任な発言を慎んだほうがいい。もっと性道徳を語り、一人前の社会人同士による周囲から祝福される形での結婚の価値を教えたいものである。

軍歌は「副作用のない栄養剤」

無職・鬼島三男(横浜市・72歳)

 私は定年後、それまでの音楽教師の経験を生かして、高齢者施設で音楽ボランティアに参加してきた。しかし、同じ高齢者施設でも、歌の内容によってはしっくりといかないときがあった。

 十月号の「ハイ、せいろん調査室です」で小林節子さんが軍歌や軍国歌謡の懐かしい名歌は「副作用のない栄養剤」と書いておられる。早速、家にある軍歌や軍国歌謡のテープを聞きなおしてみた。なんと素晴らしい伴奏や主旋律の名曲が多いのだろうかと思い、翌日それらの中から数曲をやってみた。どの高齢者施設でも感激されたのは「愛国の花」だった。

「真白き富士の気高さを、心の強い楯として、み國につくす女(おみな)らば、かがやく御代の山桜、地に咲き匂う国の花」の名詩は、よくよく考えてみると、確かに戦時下の曲であるが戦勝をあおる他の軍歌とは違っていた。

 歌った後での感想で高齢の女性は「昔の女学校で体育祭に踊ったのよ、それは大変綺麗でしたよ」と感激されていた。改めて戦時下に困苦に耐えて生きる日本女性の姿であり、いわば当時の日本女性への賛美歌だと思った。またある男性は「この歌は戦後フィリピンの元日本人捕虜収容所で、渡辺はま子さんが熱唱されて、後日収容所所長にも感激されて、百数十名の方々が釈放されるもとになったのですね」とも言われた。

 戦時下の歌は単に軍歌として、回避されがちだがこのような名歌は今もなお高齢者には、「副作用のない栄養剤」と思った。

原点にもどり一リーグ制から

元映画録音技師・北條照二(川越市・72歳)

 問題が起こらなければ何もしないが、何か事が起これば過熱ぎみに大騒ぎする。それが日本人の悪いくせだが、今度の近鉄、オリックスの合併問題に端を発したプロ野球の大騒動は、その傾向がないとは言えないと思っている。合併、そして一リーグ制への方向に選手の反対はわかるが、ファンやテレビのキャスター連中も、まさに正義と言わんばかりに一方的に機構側の非をなじった。今までは何も言わず、何もしなかったのにである。

 合併反対の署名も百二十万人以上も集まったという。よくもこんなにもパの、近鉄、オリックスのファンがいたものだと正直言って驚いているし、この何十分の一の人が球場に足を運んだら、合併問題は起こらなかったのにと思う。

 私は長嶋茂雄さんのファンであり、その流れから巨人のファンでもある。関心はセにあり、パには興味はない。たまにやっているパの試合中継をのぞくと、球場は空席が目立つ。よくこれで球団はやっているなと思い、選手も熱が入らないだろうと同情する。ただそれだけである。あまり客が来ないパ・リーグなのに、なぜ二リーグ制でなければ野球がつぶれると言うのか。そこがよくわからない。

 現在の日本の球団は独立採算制のところは少なく、ほとんどが会社の一部門にすぎず、球団社長も代表も親会社からの出向だという。その経営の根本を変えるのは大難事である。それでもやらなければならないとすれば、一度原点にもどり、一リーグ制から出発するよりないと思っている。

 「正論」平成16年11月号   論文



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