FUJISANKEI
 COMMUNICATIONS
 GROUP
 Opinion
 Magazine





 seiron
 


 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>



12月号



特定郵便局長だった父
主婦・植松早希子(千葉市・49歳)

 第二次小泉改造内閣も決まり、郵政民営化へと改革が始まろうとしている。その中で今、特定郵便局長という存在に焦点が当てられている。

 二年前に九十歳で亡くなった私の父は、ある地方の特定郵便局長であった。戦前に局長であった先代の祖父の時代と違い、戦後局長となった父の時代は全逓信労働組合との戦いであった。ストに参加するために無断欠勤など日常茶飯事で、それで処分でもしようものなら組合員が押しかけ、父の机をたたいて罵詈雑言であった。局舎と自宅がつながっているため、父が吊し上げにあっているのを耳をふさいで我慢したものだった。

 公務員特権に守られた組合員はやりたい放題だった。勤労意欲のない局員相手では、保険など民間に勝てるはずがない。

 成績が奮わないと、自分より若い郵政官僚に叱責される。しかしその官僚達も、自分の選挙となると特定郵便局長を動員して票をかき集めるのだ。

 私の兄は局長を継がなかった。父の姿を見ていた兄の選択だった。旧社会党の崩壊とともに、郵政民営化もおそらく時代の流れだと思う。

裁判員制度の疑問点
会社員・向井 拓(浦安市・35歳)

 司法制度改革の一環として裁判員制度が発足する。立法や行政に比べて国民の関心が薄い、司法の分野への国民参加という点で歓迎する動きである。ただし、疑問点が二つある。

 一つ目は、一審にだけ裁判員制度を導入しても、二審、三審にも導入しなければその意義は薄れるのではないかということ。裁判員制度が適用されるような重大事件は、高裁、最高裁へと控訴、上告されることが予想されるが、二審以降が従来どおりの職業裁判官のみによる審理では、中途半端な裁判員制度となりかねない。この点について、制度の説明を聞く限りでは、二審、三審への適用は明確にされていない。

 二つ目は、そもそも本制度が刑事裁判に限定されているのはなぜかということ。世の中が多様化し、医療裁判、特許等の各種権利に関する裁判、大型公共工事の差し止めをはじめとする行政裁判等、刑事裁判以外でも国民が参加すべき分野はある。最近でも、金融機関の合併に関するもの、雑誌等の記事内容に関するもの、閣僚の靖国神社公式参拝に関するものについて、裁判所の判決や決定が出ている。

 裁判員制度が刑事裁判に限定されている理由についても、明確な説明を聞いた記憶はないのである。

無責任な集団自殺
主婦・寺島廣美(狛江市・56歳)

 若い頃、自殺を考えたことがある。だが、若い頃は誰でも一度は、発作的に死を考えるものかもしれない。吹雪くスキー場の頂まで登り、危険といわれたツアーコースを下ろうとしながら、私はなぜか無事ふもとにたどりつくことだけを考え、スキー板を担いでいたのだから皮肉なものだ。

 その後も何度か死を考えたことはある。失恋、孤独、病。死を考える理由は折節いろいろ異なっていたけれど、私は結局、生きている。両親は最近、相次ぎ亡くなった。

 苦悩の狭間には曇天をつき、晴れ間がのぞくこともあり、人の心の天気はすぐ変わる。今泣いたカラスがすぐ笑う。泣いた日は明日笑えることを信じて死の影を振り払おう……と思うのは、十月十二日朝、遺体が発見されたという男女七人ネット心中の印象があまりに鮮明だったためだ。

 今回、男女七人が自殺した埼玉県皆野町では先月も、男女四人がネット自殺をしたばかり。その中のひとり、十七歳の少年は知人に電話をし、死のためらいを語ったそうだ。

 今回のネット自殺でも他者を道連れにしようとする自殺者のエゴに怒りを覚えた。「赤信号みんなで渡ればこわくない」。若者たちは一人で自殺する勇気がないから他人を誘うというが、死んだら後は無明の闇で、集団で死んだ意味はまるでない。

 彼らには半身不随の大病と闘いながら生を全うしたスーパーマン役者の潔さを見習ってほしかった。合掌。

中国の干渉には一致して反論を
無職・鈴木 晃(郡山市・65歳)

 中国の胡錦涛国家主席は、訪中していた河野洋平衆議院議長と会談し、対日関係を重視する姿勢を強調しながら、小泉首相の靖国神社参拝に不満を示したという。一方、民主党の小沢一郎前代表代行が北京入りした際、呉邦国全国人民代表大会常務委員長と会談したが、呉委員長は靖国問題には触れなかったという。

 河野議長には不満を示したのに、小沢氏には何も言わなかったのはなぜなのだろうか。かねて河野議長は小泉首相の靖国参拝に批判的。一方、小沢氏は靖国問題に河野氏とは異なる考えを持っているほか、反論すべきことはキッチリ反論する。中国は相手によって使い分けているのである。

 これまでも中国は靖国問題のほか、日本の歴史教科書などにクレームを付けている。これは日本の中に賛否両論があるから。もし日本全体が「靖国参拝は当然」「日本の教科書は日本が決める。中国は口出しするな」で一本化していれば、何も言わないだろう。

 要は中国は「日本の分裂を利用している」あるいは「日本の分裂を拡大しようとしている」のである。逆に言えば「靖国参拝や教科書問題で中国と同一歩調をとっている勢力は中国に加担し、日本の分裂を図っている」ことに気が付くべきである。

 このことからも、中国の日本への過度の干渉には日本側は一致して反論すべきである。

台湾の曙
元商社台北支店長・谷口浩三(台北市・72歳)

 台湾の人達が日本や外国に行く時、一番切なく悲しい思いをするのは、自分達のことを「中国人」と呼ばれることです。

 大東亜戦争終結後、日本の台湾領有権放棄後の台湾帰属問題について、国際法上明確な決定が為されたことはなく、蒋介石率いる国府軍に一時的な管理が任せられたに過ぎないのです。

 蒋一家と国民党による恐怖の暗黒政治下(二・二八事件、白色テロなど)にありながら、あらゆる苦難を乗り越え、今や台湾は二千四百万人の国民によって民主的に選ばれた総統(大統領)や立法院(国会)を有する立派な民主主義国家なのです。また経済面でも外貨保有高は日本に次いで世界第二位、貿易額世界十三位の経済大国でもあります。

 決して台湾は中華人民共和国の一部などではありません。そして台湾自前の憲法と、「台湾共和国」という正しい国名の制定に向かって、一歩一歩たくましい前進を続けている今日この頃なのであります。

 どうか日本の皆様、大陸に対して卑屈な土下座外交を続ける日本政府、外務省の政策にまどわされることなく、世界で最も親日的な台湾の益々の発展と安定を温かい眼で見守って下さるよう、心からお願い申し上げる次第です。

イチローを祝福するアメリカ人
主婦・清水美也(大阪市・32歳)

 イチロー選手が樹立した数々の輝かしい記録がよく報道された。同時に成果の受け入れ方による日本とアメリカの国民性の違いも、様々な観点から指摘されていた。多くの人に述べられていた「大きな違い」は、今回のような外国人選手による記録更新を祝福するアメリカ人と、快く思わない日本人の姿であったのではないだろうか。

 日本人のひとりとして最初に言っておきたいと思うのだが、日本人は不器用な愛情表現しかできないのではないか。母国を愛する気持ちは尊いし、母国のために喜んだり悲しんだりできることは幸福だとも思う。

 しかし一方では、外国人の活躍を寛容に受け入れ、心から祝福するアメリカ人の姿に好感を持つ人が多かった。対極の思想を持つ日本にいながら、本当はこういう生き方が理想的だとわかっている人が多いということでもあるのだろう。

 私も、欧米人の寛容な発想が自然と持てるようになりたいと思うようになった。アメリカの人々も自国を愛する気持ちは日本人と同じだろう。だが、私たちも魅力を感じたその国民性によって、アメリカは他国の人からも愛されている。結果、より母国を発展させることができ、それは優れた愛情表現をしていることになるのではないだろうか。

 広く世界から愛される日本へと成長するには、アメリカ人の精神的支柱を吸収することが役立つような気がする。

 「正論」平成16年12月号   論文



産経Webに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。
すべての著作権は産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産經・サンケイ)
Copyright 2003・2004 The Sankei Shimbun. All rights reserved.

 FUJISANKEI COMMUNICATIONS GROUP Opinion Magazine

susume
pre