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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>




“家族解体法”としての本性を現した
改正「DV(配偶者暴力)防止法」
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神奈川県平塚市立小学校教諭 野牧雅子


なんと口喧嘩も夫婦間暴力!

 女権運動の勉強会などで、「いまや、夫が妻に対して大声を出してもドメスティック・バイオレンス(夫や恋人からの暴力、以後「DV」)なんですよ」と紹介し、実際にそう書いてある各自治体の男女共同参画室(以後「参画室」)の資料を見せると、一斉に感嘆の声が上る。言葉の暴力なら女性の方が凄いじゃないか、女に口でポンポンやられたら男はかなわない、と男たちは言う。

 男たちを萎縮させるDV定義の元は、内閣府男女共同参画局にある。同局は「身体的暴力」として、「平手で打つ」「足で蹴る」「刃物などの凶器を身体につきつける」「髪をひっぱる」「首をしめる」「腕をねじる」「引きずりまわす」「物を投げつける」などを挙げ、「精神的暴力」として、「大声でどなる」「『誰のおかげで生活できるんだ』『かいしょうなし』などと言う」「実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする」「何を言っても無視して口をきかない」「人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする」「生活費を渡さない」「外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする」などを、その他性的暴力として、「見たくないのにポルノビデオやポルノ雑誌をみせる」「いやがっているのに性行為を強要する」などを挙げている。

 男女共同参画社会基本法や各地の参画条例は、女の人権を擁護するものであり、DV法の精神もそれに従っている。だから、以上の「暴力」は例外もあるだろうが、ほとんどが夫から妻への行為と考えられる。それにしても、夫婦なら考えを摺り寄せなければならない場面も多々ある中、夫が思わず大声を出したり、浪費好きの妻に生活費を渡さなかったり、うっかり返事をしなかったりするだけで、配偶者暴力相談支援センター等に妻が駆け込んで「ディーヴィ、ディーヴィ」と言い募り、夫が行政からお叱りを受けることになるケースが続発するのではないかと心配になる。DV法があるので下手をすると「容疑者」になってしまうかもしれない。

 DV被害者の女性は多く、五人に一人の割合なのだそうだ。しかし「性的行為を強要」されるのもDVなら、もっと多くの女たちがDVを受けているはずだ。大抵の女は、「ねえ、お願い…」と、何回か「強要」されたことがあるのではなかろうか。

 なお、平成十三年にできた「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(以後「DV法」)によるDV定義は、「身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの」となっており、国の参画法定義よりは一般の感覚に近い。ところが…。

 DV法は、参議院の「共生社会に関する調査会」理事会のもとに各会派からなる「女性に対する暴力に関するプロジェクトチーム」が設置され、この「チーム」が同法を草案し、衆参両院において全会一致で成立したと言う。平成十三年四月公布。

「チーム」のメンバーは平成十二年、南野知恵子(座長、自保)、小宮山洋子(民主)、林紀子(共産)、大森礼子(公明)、三重野栄子(社民)、堂本暁子(参ク)の各氏。十三年は社民が清水澄子氏に替り、堂本氏のかわりに無所属の高橋紀世子氏が入っている。同十三年のチームには各会派からもう一人ずつ加わり、その中に社民党の福島瑞穂氏もいた(『詳解DV防止法』南野知恵子氏他著、参考)。

 同法は三年後、つまり今年十六年に改正されることになっており、すでに六月に公布されて、今年十二月から施行される予定である。この改正で、DVの定義として、「言葉の暴力」も含まれてしまったのだ。恐ろしい。

 現行DV法の公布以降、参画局に「女性に対する暴力に関する専門調査会議」(以後「調査会」)が設置され、主にそこで施行のあり方について協議されたり、現状について調査されたり、現行法の問題点について検討されたりしている。関係省庁の行政担当官らが、施行計画や施行状況について調査・報告し、調査会の委員が厳しく追及する場面もあり、法改正についても検討された。ここでの討議内容が強い影響力を持っているのだ。先ほど内閣府の示すDVについて長々と説明したが、これらは同府参画局のホームページに掲載されているもので、ほとんどが、調査会の中で報告されたり話題になったりしているものである。

 調査会の会議録は参画局のHPで公開されている。それによると、現行のDV法は本当なら「言葉による精神的暴力」もDVに含められるところであった。平成十六年七月二十二日の第二十九回調査会の会議録に住田裕子委員(弁護士、獨協大学特任教授)の言葉がある。「この法律を最初につくるときに構成要件的に不明確である、ましてや保護命令に関して言えば、自由を束縛するものになるので絞るべきだというご意見が強くて、ある意味では妥協の産物としてこうなったのです」。

 その後、改正にあたりDVの定義に言葉による精神的暴力も含めたが、保護命令(後に説明)については身体的な暴力のみを対象としている。調査会としては言葉による暴力でも保護命令を発動させたいと考えていたが、「次の改正へむけての課題」となった。

 気になるのは、この法律で、「配偶者」を「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」としていることである。結婚を「曖昧化」している。それでも住田委員は「私自身の個人的な意見として非常に不満なのは、議員立法で棲み分けをしたということです。ストーカー(法)は恋人同士、DV法は夫婦関係…(略)…どちらかと言えばDV法に寄せる方が望ましい。ましてや配偶者暴力相談支援センターという幅広い受け皿がありますので、ここにできるだけ入れた方がよろしいのではないか(略)」(第二十九回会議録)。

→つづく

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 【略歴】野牧雅子氏 昭和三十一年(一九五六年)生まれ。国立音楽大学卒。五十七年より神奈川県平塚市立中学校に勤務。『現代コリア』(平成十二年五月号〜十四年九月号)に「人権在日教育との出会いとその後」を連載(十八回)。共著に『教育黒書』(PHP研究所)。

 「正論」平成17年1月号 論文





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