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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>



今月のメッセージ(第103回)(平成17年4月1日)



 お元気ですか。

 先月、台北市へ行ってきました。亜熱帯の台湾は沖縄の先の南の島ですから、暖かいと思い勝ちです。出かける数日前、むこうでお世話になる行政院新聞局のKさんから、「台北はいまとても寒いのでコートが要ります」というメールがありました。驚いたことに雪が降ったところもあるそうです。東京でも三月の雪というのはめったにありませんから、台湾ではずいぶん珍しいことなのでしょう。

 台北に五日間ほど滞在したのですが、日によっては東京より寒く感じられました。Kさんのメールがなければ、薄着ででかけたのはたしかです。わが家から成田空港へはアクセスがいいので、出発のときから現地の気候に合わせてしまうことが多いのです。はるばるやってきた南国でブルブル震えていたというのでは様になりません。いまさらいうまでもありませんけれど、情報というのは大切なんですね。

 本誌五月号をご覧いただければおわかりのように、今回の訪台の目的は台湾政府の要人三氏へのインタビューと国立故宮博物院長への表敬訪問でした。台北を訪れたのは、ちょうど中国の全国人民代表大会に台湾独立阻止の法律、反国家分裂法案が上程された翌日で、朝野をあげてこの法案に反発して騒然となっていました。

 インタビューした政府要人といいますのは、会見順にいいますと、行政院大陸委員会の呉●(●=判の半が金)燮(ごしょうしょう)主任委員、行政院衛生署長の 侯勝茂(こうしょうも)、行政院国防部の蔡明憲(さいめいけん)副部長の三人の方々です。前から決まっていたスケジュールでしたが、中国問題についてホットな話しを聞くことができました。

 政府要人の肩書きに馴染みのない方もいらっしゃると思います。台湾独特の行政組織については、すこし説明が必要のようです。

 台湾の政府組織のトップはご存じのように陳水扁総統です。総統はプレジデント、大統領ですね。総統府は日本統治時代の総督府の建物を使っています。内部は当然改造していますが、ルネッサンス様式の赤レンガの外観は当時のままのはずです。韓国はソウルの戦前の日本総督府の荘重な建物を結局壊してしまいましたが、台湾はいまなお大切にしているのです。

 台湾の最高責任者は、李登輝総統の時代になってから台湾人の直接選挙で選ばれるようになりました。中国のものすごい反発をかいましたが、台湾政治史上これは画期的な出来事でした。

 総統の下に行政院があります。内閣ですね。日本の内閣総理大臣に相当するのが行政院長で、総統が指名します。現在は京都大学に留学したことのある弁護士出身の謝長廷氏が行政院長をつとめています。

 大陸委員会、衛生署、国防部はいずれも行政院に属しています。日本の内閣は外務省、財務省、経済産業省と省が多いのですが、台湾の行政院は外交部とか交通部とか、部がふつうです。中国もそうですが、局より部のほうが上なのです。部長は大臣です。外交部長といえば、外務大臣です。国防部の蔡明憲副部長は国防省副大臣ということになります。

 衛生署は日本でいえば、厚生労働省にあたります。署長は大臣です。これはわかりやすいのですが、日本人には大陸委員会というのはなかなか理解しがたいと思います。大陸委員会は中国問題を担当する部署で主任委員は大臣にあたります。中国が外交部の専権事項でないところに、台湾の置かれた微妙な立場があります。つまり大陸を支配していた頃の中華民国という昔ながらの国家意識からすれば、中国は自分の領土であり、そこでの問題は外交問題ではなく、内政問題ということになります。

 しかしながら台湾の政権は、大陸と統一を目指す国民党から台湾独立を志向する民進党に移っています。理論的にいえば、民進党政権にとって中国は外国になるわけです。そこで私は大陸委員会の呉主任委員に、「中国問題は外交問題ですか、それとも内政問題ですか」という質問しました。「難しいですね」というのが、この質問に対する呉主任委員の第一声でした。詳しくは本誌をご覧下さい。

「正論」編集長 大島信三

 「正論」平成17年5月号 編集長メッセージ



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