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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>




短期集中連載 フェミニズム「世界革命」を阻止せよ!

過激派操る「国連」に騙された日本の男女共同参画(1)

元九州放送北九州本社代表 光原正


すべての原点は女子差別撤廃条

 国民の根強い反対にもかかわらず夫婦別姓を推進しようとする政府。思想・信条や表現の自由を踏みにじるような男女共同参画条例を次々と制定する自治体。過激な性教育が横行する学校現場。「家庭崩壊科」と国会でまで批判された(今年三月四日の参院予算委、山谷えり子議員)家庭科教科書の歪んだ記述。そして昨年の配偶者特別控除一部廃止…。

 このように、フェミニズム思想に基づく政策が次々と打ち出され、公教育の内容にも反映されている背景に「男女共同参画社会基本法」(以下基本法)があることは、ようやく一部で知られるようになってきた。しかし、この現状をつくりだした原点が国連の「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)」(The Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women、以下CEDAW)であることは殆ど知られていない。基本法は、CEDAWに対応して制定された国内法であり、下位法に過ぎない。

 CEDAWや基本法を設置根拠とする政府系の審議会や研究会にフェミニスト委員が集められ、答申を出し、それに沿って教育、税制・年金改革など多方面にわたる政策が実施されているのである。

 その一例が、内閣府国民生活局所管の「家族とライフスタイルに関する研究会」報告書(平成十三年六月二十二日)である。一読して、フェミニズムのイデオロギーにあまりに忠実に作成されていることに驚く。

 例えば、報告書は、これからの夫婦関係は「『経済的依存関係』から独立の所得を前提とした『精神的依存関係』へ」変化することが望ましい、とする。必然的に「独立した所得」を得られない専業主婦は「撲滅」すべき存在と位置付けられ、報告書は、専業主婦を優遇する税制や社会保障制度を廃止せよと提言している。既に政府は提言通り、配偶者特別控除を一部廃止した。次は特別控除の全廃、配偶者控除の廃止、公的年金の世帯配慮をなくす個人単位化(全個人が自ら負担する)である。

 恐ろしいのは報告書が遺族年金制度廃止まで提言していることである。稼ぎ手である夫が亡くなっても専業主婦は一円の年金も貰えないことになるのだ。専業主婦「撲滅」と書いたが、大袈裟な表現でないことが分かっていただけるだろう。

 報告書はさらに、「他人の権利を侵害しない限り個人のライフスタイルの選択は出来る限り自由」とも謳い、選択的夫婦別氏(姓)の導入や再婚禁止期間短縮、離婚における破綻主義や財産分与基準の明確化、非嫡出子法定相続の見直しなどの社会制度改革を提言している。

 これらの分析・提言に通底しているのは、「育児よりも家事よりも、働くことのほうが価値は高い」「父親と母親が揃った家庭の相対化」という家族破壊思想を根本とするフェミニズムのテーゼである。 「独立した所得を前提とする『精神的依存関係』」などともっともらしいことを述べているが、そこには、家族は「経済的関係や抽象的な概念で簡単に分析できる代物ではない」という敬虔な態度は一片も見られない。家族関係はまず「愛情の関係」であり、喜びと悲しみを共有し、生命の誕生と育成という深遠な関係であり、死を見つめ、先祖から子孫へ繋ぐ歴史的存在であり、そして人間の最後の隠れ家なのである。経済的依存関係だの精神的依存関係だのと単純に整理する幼稚さ、独善ぶりには呆れるしかない。

 また、「他人の権利を侵害しない限り自由」とは、「健全な家庭を営み社会の構成員としての義務を果たすことなど考えなくてもよい」というフェミニズムの破壊的本性を聞こえよく表現したに過ぎない。片親家庭、非婚、事実婚、そして恐らくは同性愛結婚も積極的に認めるべきであり、両親と子供が揃った家庭と同等の権利を保障すべき(あるいはいずれの家庭にも権利を保障しない)だという態度を表明しているのである。

 報告書はまさに、フェミニズムによって家族のあり方を変革していくという「革命宣言」である。こうした政策をフェミニストが勝手に主張しているのなら構わない。しかし、これは政府の文書である。この文書の本質を国民が認識すれば大多数は容認しないはずである。研究会は八代尚宏・日本経済研究センター理事長を座長とし、フェミニストを含むたった八人のメンバーであり、僅か三カ月余の間に二時間の会合を五回開いただけで報告書を作成している。

 審議会や研究会を隠れ蓑に、少数のフェミニストが国民の知らないところで社会制度の変更を企図し、国民の生き方や家族・家庭のあり方に干渉しているのである。政府権力が人間の生き方に関わる問題を軽々しく決め付けていいのか。主権者たる国民を無視している。

 過激な性教育も相変わらずである。先述の参院予算委で、中山成彬文科大臣が「一斉実態調査を検討する」と答弁、小泉総理も驚いて、「これはちょっとひどい。性教育など受けたことはない。それでもそんなことは自然に覚えた」と珍しくまともな反応をした。

 しかし、平成十四年には厚生労働省所管の財団法人がピルを勧める冊子を全中学生に配布していた(その後一部回収)のである。

 フェミニストは性教育で羞恥心や品位や情操という精神の高貴性を傷つけても恬として恥じない。男女関係の神秘を剥ぎ取れば、家庭破壊の劇薬であるフリーセックスに対する心理的障壁が取り除かれる。これはフェミニズムのイデオロギーが要求しているのである。厚生労働省の団体が中学生にピルを飲まそうと考えたのもフェミニストが裏で暗躍しているからである。

 摘示したらきりがない。政府はフェミニストに乗っ取られていると思わざるを得ない。

 このまま国民が事態を黙認すれば、前記報告書通りの政策が着々と展開され、国民が気付いたときには、フェニミズム先進国アメリカと同様に、離婚率が急上昇して貧困母子家庭が増えるであろう(今年一月二十日付読売新聞によれば、一九九八年から二〇〇三年の五年間で離婚が原因で母子家庭・父子家庭となった世帯は一・五倍に急増、既にその兆候が現れている。母子家庭の平均年収二百十二万円)。子供たちは「育児の社会化」の名のもとに公・私立の育児センターに預けられ、「母親の手厚い愛情」から引き離されて情緒不安定になって荒れ、薬物中毒や犯罪に走ることになる蓋然性も極めて高い。

 家庭が崩壊したら、男も女も最も私的な生存基盤を破壊され、荒涼たる原野に投げ出されることになるだろう。そうなれば世界的にも類まれな、思いやりのある優しい我が国の国民性が消滅することは必至である。

 こうなったのは、政府が、「男女共同参画」「ジェンダー」などという曖昧な用語を使って意味論的な混乱に導き、基本法が求めているのは実は「常識的な男女平等ではなく家族・社会の解体である」という核心的事実を隠蔽しているからである。その為、国民は事態の重大性を認識できず、異議を唱えることもできなかった。こうして姿の見えない「無血革命」が進行しているのである。

 基本法はフェミニズム(日本ではジェンダーフリーと言い換えられてきた)、つまり家族破壊を目指す過激なイデオロギー(ユートピア論)を体現したものである。そして、この革命的イデオロギーを世界中に拡散させているのがCEDAWである。

 政府がこのジェンダーフリー条約の批准を基に社会のジェンダーフリー化を進めて二十年が経過している。さらに、ジェンダーフリー法ができて五年が経過している。もはや手遅れの感があるが、我が国は民主主義の国である。果たして、このような事態は多くの国民が了解できるのか公開の場で大いに議論されなければならない。

→つづく

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 【略歴】光原正氏 昭和十五(一九四〇)年、鹿児島県出身。四十一年東大経済学部卒業、郵政省入省。平成五年退官後、郵政貯金振興会理事、TVQ九州放送北九州本社代表などを歴任。教育を考える会会員。

 「正論」平成17年5月号 論文





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