マスメディアは商品か
県立高校教諭・藤岡秀匡(福島県いわき市・46歳)
民主主義の社会において、マスメディアは主権者である国民に知る権利を保障し、世論の形成を助けるための情報を提供し、時に論説をもって世論をリードする役割を担っている。公器と言われる所以である。また、情報を自由に国民へ提供するため、高い独立性が認められている。第四の権力と言われる所以である。言い換えれば、自由なマスメディアが存在してこそ、民主主義は成立すると言える。
その社会の公器と言えるマスメディアを、自由な経済活動を保障された社会においても他の商品や企業と同じように売買することが認められるだろうか。もしそれが認められるとすれば、自分に不都合な報道を続けるメディアを買収によって支配下に置き、黙らせることも可能となる。
そこまでいかなくとも利益追求を目的とした買収が行われた場合、公器としての役割を放棄させ利益追求のみの経営に転換させることも可能となる。このようなことが起これば民主主義の危機と言えるだろう。
従ってメディアの経営者には報道の自由を守るため、他の企業の経営者よりも重く経営の安定を図る責任を、社会に対して負わなければならない。もちろんメディアも利益を生み出さねば経営は成り立たないのであるから、合併や買収により経営方針を転換していくことも必要となる場合があろう。
しかし、今回のライブドアのような敵対的買収はメディアの公器としての役割を無視して行われる危険性をはらんでいる。敵対的買収を可能にした法の不備は無かったのか。外国にはクオリティーペーパーが買収によりゴシップ紙に変わった例が有るというのに。
マスメディアに敵対的買収はそぐわない。
額に汗して働け!
会社員・田口博行(富山市・56歳)
堀江某なる虚業家が最近とみに跋扈(ばっこ)し、産経新聞も袖すり合う程の影響を受けたとか。
野球界に口を出して来た時から、何やらうさんくさい奴と思っていましたが、そいつが何故か世上では人気があると聞いて本当に驚きました。日本人の気質も大きく変化したみたいですね。この手のあぶく銭師はかつては最も軽蔑されたものです。株などには絶対に手を出すなと、親に強く言われた人も多いのではないでしょうか。
何やら産経新聞は偏向しているので“エンタメ”系の新聞にすれば良いとか宣った由。山師に偏向と言われれば、あっぱれ勲章ものと喜ぶべきでしょう。まことに人の思い上がりとは醜いものであります。
山本夏彦氏ではありませんが、活字には必ず「志」が染み込んでしまうものです。その「志」のかけらも無いものが、思いつきで言ったにしても少々安っぽすぎますね。なんせ“エンタメ”ですから。少しは言葉に恥じらいを持てと言っても、たぶん通じないでしょう。
産経新聞は間違っても彼の口からフワフワ飛び出すような、“メディア”や“情報”や“ソフト”などという、浮き草のようなものにはなってくださいますな。そんな物は彼の亜流によってこの世に満ち満ちております。液晶画面に浮かんで消える電脳世界の風船稼業。金貸しか株屋が堀江某には分相応であるようで。
ついでながら、堀江さんにはすばらしい言葉を捧げましょう。映画「ウォール街」のラストシーンで、株売買により破滅した息子に対して父親が言う科白です。
「額に汗して働け!」
老婆心ながら。
子育ては自己責任で
主婦・伊藤ゆかり(愛知県岡崎市・41歳)
先月号の本欄に、子供のいない女性への補助は必要ないとの意見がありましたが、私は子供のいる家庭への補助もこれ以上必要ないと思っています。第一に給食費や教科書などをはじめ、すでに一人の子供に対して年間百万円ほどの補助がなされているときいたことがあります。さらにはある一定の年齢になるまでは医療費も優遇されています。
第二にそもそも補助という発想は、それにより産む子供の数を増やすとの意図があると思うのですが、私には補助によりそういった結果がもたらされるとは思いません。周りを見回してみても、今の親は英会話にピアノにバレエなど多くの習い事をさせ、最低限大学に進学させたいと考えています。親も子も欲望は肥大化し、補助金はその子供がもっと裕福に暮らせる費用にまわされるだけではないでしょうか。
実際私の友人で五人の子育てをしている人がいますが、彼女の家庭は決して裕福とはいえません。が、本当に産みたい人は補助金があろうとなかろうと産むものでしょう。
また少子化対策の根底にあるのは、彼らが長じては将来の年金を支えてくれるという思いこみですが、これは幻想にすぎません。現在の不登校、ニート、若年層の鬱病の増加を考えれば、彼らは年金を払うどころか、大人になってもその親世代が子供の面倒をみなければならないという事態もありうるのです。
私は子育てをしている人を尊敬しますが、それをお上に助けてもらおうというのは筋違いで、自業自得とは言いませんが、自己責任でお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
| 「正論」平成17年5月号 |
論文
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