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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>



今月のメッセージ(第104回)(平成17年4月30日)



 お元気ですか。

 あれほど騒がれたライブドアですが、ぱたりとメディアに登場しなくなりました。この移り気の激しさは世界のメディアに共通する特性でもあり、日本人の国民性にもよるものでありましょう。世の中の動きの速さにはいつも振り回されています。

 中国の反日デモがどうのとか、北朝鮮の核はどうのといった殺伐とした事柄ばかりでは、およそ心の豊かさなどはとうてい望めません。そこで先日、ゴッホ展をひらいている東京国立近代美術館へ行ってきました。ここ大手町から竹橋の近代美術館までは地下鉄東西線でわずか一駅の近さです。快晴の昼下がり、ぶらぶらと歩いて行きました。四月下旬のお堀端の美しさは格別でした。

 日本人はゴッホが大好きですね。あの強烈な色彩もさることながら、ドラマチックな人生もゴッホ人気に一役かっているのでしょう。ゴッホを主人公にした映画を私は二本観ています。

 もうずいぶん昔ですが、東京でゴッホ展を見に行ったとき、切符売り場に列ができていたのを思い出しました。並ばなければ入場できない大看板の画家などそういるものではありません。やはり今回も行列ができていました。生前、たった一枚しか売れなかった画家の絵が、いまではとてつもない値段がつき、こうして大勢の人たちを美術館に集めています。夢物語ですけれど、実兄の才能を信じて援助しつづけたゴッホの弟に、この盛況についての感想を聞いてみたいものですね。

 今回の展覧会で、ゴッホがミレーなどの模写に取り組んでいたことがよくわかりました。「花魁」という作品も日本の浮世絵の模写といってよいでしょう。ゴッホといえば、天才。天才はおのれの感性のみで事足りる、と思われがちですが、ゴッホは努力の人でもありました。

 欧州へ行って、郊外でいつもまじまじとながめるのは糸杉とオリーブの木です。ですからゴッホの「糸杉と星の見える道」(クレラー・ミュラー美術館蔵)は好きな作品でゴッホは一八九〇年に自殺しますが、この作品はその年に描かれたものでした。

「正論」編集長 大島信三

 「正論」平成17年6月号 編集長メッセージ



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