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 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>




始まった地球の浄化作戦 新エネルギーの光と影 [1]

あなた任せの風力に未来を託せるか(1)


ノンフィクション作家 二見喜章

 地球の温暖化を防止するために取り決められた京都議定書が去る二月十六日に発効した。日本をはじめ先進各国に対して一九九〇年比で先進国平均五・二%という厳しい削減義務を課したわけで、達成期間も三年後の二〇〇八年から一二年の間と設定された。特に日本に対しては六%の温室効果ガス(二酸化炭素=CO2やメタンガスなど)の排出削減が課せられた。地球の浄化作戦は本格始動したわけである。

 時あたかも「自然の叡知」をメイン・テーマとした愛知万博(愛・地球博)が世界百二十一カ国と四つの国際機関の参加を得、三月二十五日に開幕して歩調を合わせた。

「地球の許容量(キャパシティ)を超えてしまった人類の在り方を見直そう。そしてかけがえのない星である地球の“叫び”に耳を傾けよう」

 愛・地球博にはこうしたメッセージが込められている。それだけ地球は危機的状況にあるということだ。

 石油や石炭など化石燃料の存在を発見し活用方法を取得した人類は、十八世紀以降これらのエネルギーを積極活用することで近代文明を築いてきた。その結果「温室効果ガスの異常な増加による地球温暖化」をもたらしてしまったのだ。

 太陽からの熱エネルギーと地球から大気圏外へ放出される熱エネルギーのバランスが取れていれば、温室効果ガスは地球環境や人類にとって有効な物質となり得る。しかし、近年の地球はCO2の濃度が想像以上に高くなり、そのバランスを欠いてしまった。地球の熱エネルギーの多くは宇宙空間へは放出されず、そのまま大地へ降り注いでいる。つまり地球全体が温室のようになってしまったわけだが、これによって南極や北極の氷が解け、海水面が上昇、珊瑚礁でつくられた低い島々(キリバスやツバルなどの国・地域)が水没し始めた。アルプスの氷河も解け出し、河川に洪水をもたらしている。また寒波や猛暑、旱魃(かんばつ)、台風やハリケーンなどの異常気象が地球規模で頻発していて、動植物の生態系に与える影響が懸念されている。

 気象庁の調査によると、昨年(二〇〇四年)の世界における平均気温は、統計を取り始めた一九八〇年以降、四番目に高い数値を示した。日本では連日のように猛暑に悩まされ、病気になる人が続出した。電力の消費量も冷房のフル活用でウナギ登り。過去百年で「地球の温度は確実に一℃上昇した」と専門家は分析する。

日本のエネルギー自給率は四%

 こうした惨憺たる状況下で京都議定書は発効されたわけだが、二〇〇一年実績で世界一のCO2排出国であるアメリカ(二四%)は批准していない。また、第二位の排出国で人口十三億余の中国(一三%)も経済大国の道を歩んでいながら、発展途上国ということから批准を免れている。これでは京都議定書の効力が疑問視され、有名無実化しかねない。

 ことに中国の上空に撒き散らされたCO2やNOx、SOxなどの有害物質は、偏西風に乗って日本列島へ確実に運ばれてくる。風下になっているからである。日本海側の山林などには、白くなった裸木が目立つ。これはほとんどの場合、酸性雨による自然被害である。

 日本鉄鋼連盟が中国の製鉄会社に対して有害物質を限りなくゼロにする製鉄技術・メンテナンス技法等々を教え、指導することにしたのは、こうした危機感の表われである。中国は日本の経済・技術援助を得て発展著しい国となったが、環境対策面では日本よりも三十年は遅れている後進国なのだ。

 世界に冠たる工業化・情報化社会で経済大国である日本。国連への分担金負担割合もアメリカと覇を競う。二〇〇五年の負担割合は、日本が一九・五%、アメリカが二二%。日本とアメリカの二カ国だけで国連全体の四二%近い負担金を拠出している。それほど富める国の日本だが、社会システムを支えている要(かなめ)のエネルギー資源となると“最貧国と見紛う”ほど皆無に等しい。日本のエネルギー自給率は今や純国産のエネルギーの域に達している原子力発電を除くと四%しか無いのだ。

 この本質的な問題をどのように解決し、先進国として世界の平和と福祉・文化などの向上に貢献して行くのか。このことを動態的に模索することが、現在(いま)われわれ一億二千七百万人の国民に突き付けられている。温室効果ガスの原因物質・CO2やNOx、SOxなどの少ないエネルギー源はなにか、という問題提起である。

 日本は一九七三年の第一次石油ショック、七九年の第二次石油ショックを経験して世界一の省エネ技術を身に着けた。省エネ技術は、今や輸出産業として成長していると言っても過言ではない。産業界のコスト意識・環境負荷への倫理意識が他の追随を許さない技術力を確立させたといえる。しかしそれは当然、国民の意識の高さという後押しがあってのことである。国民のキーワードは常に「より安く、より安全でクリーンであり、より効率的な質の良いエネルギー」というものだからである。

→つづく

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 【略歴】二見喜章氏 神奈川県出身。新聞記者、雑誌記者を経て二十四年前に独立。教育、原発、ジャーナリズム論を中心に執筆、講演で活躍。著書に『現代日本の名門校』『ドキュメント原発建設』(日本図書館協会選定図書)、新書本『原発と上手につきあおう−−原発報道に異議あり−−』などがある。電話&FAX=045(651)7325

 「正論」平成17年6月号 論文





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