フジサンケイグループはこのほど開いた正論大賞選考委員会で、第24回正論大賞を立命館大学教授の加地伸行(かじのぶゆき)氏(72)、第9回正論新風賞を大阪大学教授の坂元一哉(さかもとかずや)氏(52)にそれぞれ贈ることを決めた。

 正論大賞はグループの基本理念である「自由と民主主義のために闘う正論路線」を発展させた個人に贈られる年間賞。

 論語、儒教研究の第一人者である加地氏は、「儒教とは何か」「論語全訳注」などこれまでも中国の古典、歴史、思想に関する著作を数多く発表している。産経新聞「正論」欄やコラム「古典個展」では、現代中国に関する鋭い分析や「日本語」を題材として幅広い評論活動を展開している。こうした精力的な評論、言論活動が正論大賞にふさわしいと判断された。

 平成12年に制定された正論新風賞は、21世紀の日本を担う新進気鋭の言論人を見出して顕彰するために設けられた。

 坂元氏は、戦後日米関係の研究で緻密な資料分析をもとに国際関係の全体像を構築する構成力が高く評価されていた。9・11米中枢同時テロ後の国際情勢の激変を踏まえ、日米同盟の重要性を説くとともに、集団的自衛権で新しい発想の必要性を訴えるなど日本の進むべき方向について積極的な評論活動を展開した。

 両氏とも産経新聞正論メンバー。

 正論大賞の正賞はブロンズ彫刻「飛翔」(御正進氏制作)、副賞は賞金100万円、正論新風賞の正賞は同「ソナチネ」(小堤良一氏制作)で、副賞は賞金50万円。贈呈式は来年2月23日夕、東京・グランドプリンスホテル赤坂で行う。

2008.12.17








 36年前、昭和47年9月29日、日本は中華民国(台湾)と断交した。

 その1週間後、名古屋大学助教授であった私は台湾に渡り長期留学をした。その目的は中国古典研究にあったが、激動する政治情勢の中、現代中国についても探究することとなった。そして台湾が集積する諸資料を客観的に読むうち、大陸において進行中の文化大革命の実態を知り、日本におけるその理解がいかに浅薄で一面的であるかを痛感した。

 帰国後、学者として生きる一方、「言論人」「月曜評論」(ともに今は休刊)というミニコミ紙に人知れず中国批判を書き続けた。当時、中国批判者は極めて少なく、孤独であった。

 その私に声をお掛けになった方が、産経新聞社外信部に在籍の住田良能氏(現社長)である。そこから産経新聞との御縁が生れ、しだいに私は現代の諸問題について論じるようになった。もっとも、自分の能力を心得、その範囲は中国や教育などに関わるものに自ら律してきた。

 さらに言えば、私はあくまでも中国古典学研究者であり続けた。その立場から現代の諸問題を見るーそれが私の唯一の取りえというところであろうか。これは今後も変ることはあるまい。

 そのためであろう、また関西在住ということでもあろう、私は群れずに独り立ってきた。思想的政治運動には役立たずであった。まして己れをジャーナリズムに売りこもうなどとしなかった。世の流行には背を向け、今も原稿は筆で書く時代遅れの人間である。

 そういう頑固者を受け入れる組織は少ない。にもかかわらず、私を正面から受け入れてくださったのが産経新聞であり、正論調査室であった。

 「正論」(雑誌「正論」も含めて)では伸び伸びと論ずることができた。その恩義に酬いるに心がけたことはただ一つー男児たる者、独創あらざれば、筆を執らず、口を開かず、であった。

「孤剣楼」(こけんろう)と号し、孤剣を揮(ふる)ってきた私は、これまで世のいかなる賞遇ともまったく無縁に過ごしてきた。その70を超えた老学に、このたび産経新聞は望外の歓楽を与えてくださった。そのことへの感謝のままに、不才、一詩を得たり。曰く、

 産璞琢磨字字円
 経綸縷縷古稀年
 新承大誉思千里
 聞識未成詩一篇
産セシ璞(あらたま)(アイデア)琢磨(たくま)シテ 字字円(まどか)
経綸(けいりん)(論じ続け)縷縷(るる)トシテ古稀ノ年
新タニ承(う)ケタリ大誉 (来し方の)千里ヲ思フ
(我が)聞識(ぶんしき) 未(いま)ダ成ラザルモ 詩一篇アリ
2008.12.17








 産経新聞に拙論を掲載する機会を与えていただいてから2年近くになりますが、このたびは思いがけず正論新風賞を頂戴することになり、恐縮しております。

 産経新聞は今年、「正論」欄の創設35周年を記念して、「昭和正論座」という形で過去の正論論文を短い解説とともに再掲載されています。どの論考も世代を超えてなお輝きを失わないものばかりで、戦後という時代の諸問題を再考する格好の手がかりにもなる企画だと思います。

 9月13日に掲載されたのは、京都大学で国際政治学を教えた高坂正堯教授(故人)が石油ショックと日本社会を論じた論考でした(「"危機"を生み易い社会」昭和49年1月16日)。高坂教授は、マスコミや多くの論者が石油ショック後の日本の行方に悲観的になる中、危機の国際政治的性格を冷静に分析したうえで、強気の楽観論を展開しました。この正論も、石油ショックによって引き起こされた実体のない危機感の心理的、社会的背景を解き明かし、平時の備蓄によって無用の不安を断ち切ろうと説いています。

 この正論が載った年に私は京都大学に入りましたが、1月といえばまだ高校3年生で、世の中これから一体どうなるんだろうかと、高校生なりに不安を感じつつ、受験勉強にあけくれた毎日だったと思います。この論文のことはおろか、後に指導を受けることになる高坂教授のことも知りませんでした。

 そのこともあって感慨を覚えながら読んだのですが、実はその日は、私自身のコラム「世界のかたち、日本のかたち」の掲載日に重なっておりました。テーマも石油ショックに関係がないわけではない地球温暖化問題です。同日の掲載は偶然のことでしょうけれども、うれしく思いました。

 それと同時に、私も高坂教授のように、国民に自信と希望を与え、時間が経っても読める評論を書きたいとの気持ちをあらたにしました。この賞は、それなら頑張りなさい、という意味の賞だと考えることにさせていただきます。本当にありがとうございました。

2008.12.17




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