■新アーミテージ報告 日米で「中国啓発」 より対等な同盟要求
【ワシントン=有元隆志】アーミテージ元国務副長官ら米国の超党派の外交・安全保障専門家らは16日、2020年までの対日戦略に関する報告を発表した。中国やインドが台頭するなか、引き続き「日米同盟は米国のアジア戦略の要」と位置づけ、インド洋やイラクへの自衛隊派遣を評価する一方、日本が自国の防衛における責任を拡大するよう求めた。
≪中印の台頭≫
報告は2000年に発表された「アーミテージ・ナイ報告」の第2弾。この7年間で、「中国とインドという2つの大国が同時に台頭するという前例のないことがおきている」とし、特に中国を意識した内容となった。
20年までに中国は「責任あるステークホルダー(利害保有者)」になる可能性がある半面、ナショナリズムなどにより近隣国の脅威となることもありうると予測した。
日米は中国の増大するエネルギー需要により、原油価格の上昇などの影響を受けるとした。エネルギーの効率化などでの協力の可能性もあるとも予想した。
東アジアの安定は「日米中の3カ国関係の質にかかる」とし、日米が協調して、「中国がステークホルダーとなるよう啓発すべきだ」と促した。
20年にはインドが「中国を超えるかもしれない」として、中国をにらみ日米ともにインドとの戦略的パートナーシップを強化するよう求めた。
≪朝鮮半島統一も≫
20年までには朝鮮半島が統一される「確率は高い」とする一方で、北朝鮮の核開発問題は「統一によってのみ、最終的に解決されるようにみえてきている」と指摘。核問題を巡る6カ国協議の行方に懐疑的な見方を示し、日米があらゆるシナリオに備えるべきと主張した。
韓国については、「(日米と)短期的には違いはあっても、共通の価値観や、経済的・安全保障上の利益も共有している」として、連携は維持できるとした。
≪着実な歩みを≫
前回の報告では、「日本が集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約している」と批判、日本政府が憲法上禁じられていると解釈する集団的自衛権をめぐる議論に一石を投じた。
今回は、集団的自衛権の見直しに意欲を示す安倍晋三首相が就任したこともあり、「憲法改正論議は勇気づけられる」と述べるにとどまった。
前回報告は「日米同盟の活性化」に力点をおいたが、インド洋、イラクへの自衛隊派遣、北朝鮮問題での協力で「同盟は強化された」と日本側の対応を評価した。
前回は沖縄の米軍基地問題に一章を割いたが、昨年5月に米軍再編協議がまとまったこともあり、ミサイル防衛の予算増額など、日本に自国防衛により責任を負うよう求めた。新型イージス艦の共同開発の検討の必要性に触れたほか、米側には最新鋭のステルス戦闘機F22を日本に配備すべきとした。
経済では自由貿易協定(FTA)の交渉開始の重要性を強調した。
前回報告は、ブッシュ政権下での日米同盟強化の「青写真」となった。今回は集団的自衛権問題のような「挑発的」な文言はないものの、より対等な同盟に向けて日本に着実な歩みを続けるよう求めており、今後の安全保障論議にも影響を与えそうだ。
提言にはナイ元国防次官補、キャンベル元国防次官補代理、グリーン前国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長らが参加した。
◇
■新アーミテージ報告 報告要旨
一、日米同盟は2020年まで米国のアジア戦略の基盤であり続ける
一、日本の安全保障面での貢献拡大のため、憲法改正論議や自衛隊の海外派遣を随時可能とする恒久法制定を歓迎
一、日本の防衛費増大が重要、武器輸出3原則の撤廃検討が必要
一、防衛省幹部の米太平洋軍司令部派遣、米軍と自衛隊の作戦面での連携強化が必要
一、中国が地域の支配的国家として台頭する可能性がある。国内安定のためナショナリズムの利用を続ける公算も大きい
一、米中による地域の「共同管理」との考えも一部にあるが、これは米中関係を過大評価し、地域の同盟国、友好国との関係を損なう危険がある
一、日米は中国に「責任ある利害保有者」となるよう促し、双方の利益となる分野で3カ国の協力を模索するべきだ
一、朝鮮半島で20年までに南北統一が実現する見通しが高い。ただ、北朝鮮が核開発を続けている可能性もあり、日米はあらゆるシナリオに備えなければならない
(共同)
【2007.02.18】
|