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ゆうゆうLife
 

我慢するしかなかった特養 

 東京都 会社員 61

 特養ホームに入所していた母が、先日他界しました。死亡の原因は、脳梗塞(こうそく)でホームのトイレで倒れたことでした。

 母はオムツを嫌がり、トイレで用を足していました。尿意を感じるとトイレへ連れて行ってもらい、自分で始末をしてベルを押して帰してもらう。倒れた当日も同様に便器に座らせてもらい…。が、時間が過ぎてもベルが鳴らないことに気付き、ドアを開けたら倒れていた。というのが、ホームの人の話で、あわてて救急車で病院に運び、私に連絡がありました。

 トイレに入っていた時間を聞いても、「10分か20分くらいだと思いますが…」とはっきりしない返事。母は鼻血の出血が詰まって、息もできないくらいで、とても短時間とは思えませんでした。

 責任の問題よりも、それについて一言の謝罪もなく、意識がなく、半身不随になった母が1カ月半入院する間、施設の方は一度も見舞いに来ることもなく、施設長は告別式にも来ませんでした。

 母の死後、荷物を引き取りに行ったとき、施設長に「元気だった母をあんな形で見送ることになるなんて、残念でなりません」というと、「そうですよねえ」と他人事のようだったのには、怒りさえ感じました。

 思えば、その半年ほど前、母にひどい帯状疱疹(ほうしん)が出ていたことがあり、ホームの反対を押し切ってかかりつけの病院に連れて行ったところ、状態があまりに悪く、2週間入院したこともありました。

 それでも、私自身が一人暮らしで働いていることもあり、家でみることができませんでした。日頃は茶菓子などを持ってホームを訪れ、少しでも母が快適に過ごせるよう、頭を下げる以外に方法もありませんでしたが、母を含めた入所者には居心地は良くなかったのかもしれません。

 母が手荷物をまとめてベッドに座り「ここを出たい」と言っていたこともありました。母に「そんなわがまま言わないで。ホームの人は皆、良い方だし、どこへ行っても同じだから」と言ったことを、今更ながらに後悔しています。

 しかし、現実は特養はどこもいっぱいで、入れただけでもラッキー。家族が何か言えば、「出ていってもらっても結構」な状態だけに、我慢するしかないのが、残念でなりません。母は結局、安らかに旅立ちましたが、母の死を無駄にしないためにも、お年寄りの入る施設の向上を心から望んでいます。

(2007/08/08)

 

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