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【ゆうゆうLife】医療 難治がんと生きる 読者からの反響 

生活の質を維持しながら、がんとどう向き合うか。患者と医療者の模索は続く


 ■生の選択 続く模索

 17〜19日掲載の「難治がんと生きる」に多くの反響を頂きました。難治がんになっても、患者が医師にどう生きたいかを伝え、医師と協力して治療をしていくことが、よりよい時間を継続するには重要のようです。(北村理)

 「がんがあっても元気だったらいいじゃあないか、と思えたとき、素直に治療に向かおうという気になりました」というのは、神奈川県に住む30代の女性。

 今年6月末、70代の母親が肺がんの告知を受けた。女性はそれ以降、パソコンの画面をにらむ日が続いた。「がんが消える治療を求め、あふれる情報の中をさまよっていました」。どんな治療法を目にしても、年老いた母親が治療を境に、寝たきりになってしまうのではないか、という恐れにとらわれた。

 そんな時、手にしたがん治療の本で「生きる時間は自分で決められませんが、生き方は自分で決められます」という言葉に出合った。女性は母親と「治療の選択ではなく、生き方の選択」について話し合った。

 結局、「おいしくご飯が食べられる時間を可能な限りに長くする」ことに落ち着いた。

 がん治療の相談窓口「キャンサーフリートピア」を併設する銀座並木通りクリニック(東京・銀座)で三好立医師に、母親と話し合った内容を伝え、治療方針を相談した。結果は意外にも当たり前のことだった。

 「転移していなければ、癌専門病院で手術。転移があれば、抗がん剤治療」。ただし、抗がん剤治療は、母親の体力を測りながら、可能な限り副作用を抑え、継続することに力点を置いた。

 患者の生活の質を前提に、がんの治療方法を模索する三好医師を紙面で紹介したところ、同医師にも、数十件の問い合わせがあったという。中には、あきらめていた治療を再開した患者もいる。

 三好医師は「がんは長期にわたり患者さんの生活に大きな影響を及ぼす。長期戦を戦い抜くには、患者さんに体力と意思がなければ難しい」と主張する。

 しかし、がん治療の現場は「医師不足で、患者のニーズを引き出す時間的な余裕がない。そのうえ、それぞれの病院の治療方針に縛られすぎている。難治がんを抱える患者さんは行き場を失い、難民化せざるを得ない」と三好医師は指摘する。

 この3連休明けの25日、1カ月前から三好医師のもとで、2回にわたり低用量の抗がん剤治療を受けた60代の男性から、「ゴルフのコースを回れました」と報告があったという。

 男性は大腸がんが肝臓に転移。テレビで名医と紹介されていた外科医の診察を受けたが、「手術は不可能」とされ、三好医師の元を訪れた。男性は、それまで20数回にわたって受けた標準量の抗がん剤治療で体力も落ち、精神的にもうつ状態だったという。

 三好医師は男性について、「がんを治さなくてはいけないと思いこみ、精根尽き果てていた。しかし、生活を維持することが大事だと話し合い、がんと向かう姿勢が変わった。生き方も前向きになったようだ」という。

                   ◇

 治療で効果が上がらなければ、患者の焦燥感はつのる。しかし、それについて病院で丁寧な説明がされないことへの不安を指摘する手紙も目立った。

 大腸がんから肺に転移した大阪府の60代の男性は「手術後、苦しみながら抗がん剤の治療を続けているが、効果が出ない。しかし、病院では説明がない。体力のあるうちに、治療のやりかたを見直したい」。

 この夏、肝臓がんを告知された兵庫県の男性の家族は「今後、どんな治療になるのか不安だ。しかし、病院は治療の説明はしても、先行きの不安に答えてくれそうにない。どうしたらいいのだろうか」。

                   ◇

 現在のがん治療を提供する医療者側にも、迷いや疑問はある。

 製薬会社で抗がん剤の開発に携わった千葉市の男性は「重い副作用をもたらす抗がん剤治療に疑問を持っていた。そこまで重い副作用に耐えて、治療しなければならないのかと自問自答した」という。

 抗がん剤はもともと、体力の限界ぎりぎりまで多い量を使うよう設定されている。場合によっては、患者の体力を著しく奪うことになりかねないからだ。

 疑問を少しでも解消しようと、睡眠薬との併用など、治療法に試行錯誤した。しかし、「がんをなくすことにとらわれすぎていた。がんとともに生きるという考え方もあると知って、長年の疑問が解けたような気がした」とする。

 東京都江東区の癌研有明病院の武藤徹一郎院長は「2人に1人ががんで亡くなる時代が来ると、医療機関には多くの国民が納得できるサービスが求められる。そのためには、がん細胞をなくすことだけに心血を注いできた治療のありかたを見直さざるを得ない。医療者にその覚悟が求められている」と話している。

(2007/09/27)

 

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