産経新聞社

ゆうゆうLife

自宅で旅立った夫

 奈良市 主婦 堀田宗子 72

 「病院から在宅へ」(1月22〜24日掲載)を読みました。夫は昨年、1カ月あまりの在宅療養を経て自宅で亡くなりました。「アリガトウ」の言葉を残して逝きましたが、最後まで共に過ごし、共に語りあえた満足感でいっぱいです。住み慣れたわが家で最期を迎え、安らかに旅立った夫にうらやましささえ感じます。

 一昨年末、夫は末期がんの告知を受けて入院し、抗がん剤治療を受けました。副作用で吐き気がひどく、ほとんど食べ物を受け付けない状態。その後の検査もつらかったらしく、それ以上の入院を拒み、近くに住む娘と在宅介護の道を選びました。

 しばらくは、かかりつけ医で点滴を受けていましたが、次第にそれもできなくなりました。在宅で看られるか迷いましたが、インターネットで在宅ホスピスに対応してくれる診療所を知り、早速連絡をとりました。

 先生は翌日からほぼ毎日来てくださり、合間を訪問看護師さんで補いました。介護保険は申請しましたが、認定が出たのは亡くなる前日。ほとんど私と娘で乗りきりました。

 先生はとても熱心で、連絡体制もきめ細かく、私自身も相談にのっていただき、心のケアもしてくださいました。こうしてわが家では、満足な看取りができましたが、在宅ケアのできる診療所は少なく、先生のクリニックも今はお医者さんが増えたようですが、当時は、県内のごく一部しかカバーできないとおっしゃっていました。

 私自身の経験から、多くの人が在宅で療養できるように、医療や介護が充実すればよいなと思っています。

(2008/02/07)