産経新聞社

ゆうゆうLife

ご両親はいつも心に

 神戸市北区 音楽講師 津村敬子 50

 赤羽みちえさんの「のんびりいこうよ」を楽しく、時には涙ながらに読ませていただいています。平成13年に亡くなった私の両親に似ているので、共感することが多かったのです。

 同居していた母が8年に脳梗塞(こうそく)で半身不随になり、父が中心になって介護が始まりました。認知症もひどかったので、父は眠れない毎日でした。介護疲れから腰痛が悪化し、手術することになり、母を施設にお願いしました。母が内臓不全で亡くなったとき、父は術後2日目で葬儀に出られず、悲しそうに毎日を病院で過ごしていました。

 それから3カ月たち、担当の先生の勧めで2泊3日の予定で自宅に帰りました。父は仏壇の前で長い間お経をあげ、背中を丸めて泣いていました。でも久しぶりの自宅で、ゆっくりおいしい物を食べ、孫たちとも和やかに話して2日間を過ごしました。

 明日は病院に戻るという夜、生まれて初めて、父をお風呂に入れてあげ、父が「ありがとうねえ。また明日ね。おやすみ。部屋の扉、少し開けておいてね」といったのが最後でした。

 次の日の朝、なかなか起きてこないので息子が起こしにいって異常に気がつきました。警察医の先生は赤羽さんと同じく「心不全ですね。夜中に亡くなったのでしょう。苦しんだ様子は全くありません」といわれました。あっという間に葬儀がすみ、実感のない毎日でした。

 悔しくて悔しくて…。父が母にしてくれたように、今度は私が父を、と思っていたのに、私に迷惑をかけないように、大好きだった母の後を追って、さようならも言わずに、逝ってしまいました。

 赤羽さんも悔しくて悲しくて、どうしようもない毎日でしょうが、あなたの漫画に勇気づけられている読者がいます。どうぞ、お仕事がんばってください。ご両親はいつも心にいます。

 私たちのいるすぐそばで、2人は見てくれているのだと思っています。2人を思い出し、涙を流して、泣きながら仕事をし、それでも毎日の生活をしてゆきましょう。ご冥福(めいふく)をお祈りいたします。

(2008/03/06)