産経新聞社

ゆうゆうLife

高齢のボランティア

 大阪府河内長野市 平見英子 90

 近くの小規模デイサービスに週2回、通っている。ある日の午後は、手品を見せていただいた。白髪交じりの髪をきちんと整えた、背広姿の男性がかばんから小道具を出し、手品を披露された。

 美しい緑色のひもを、私どもの仲間のひとりが、言われるままに、はさみで切ると、そのひもを両手のひらでもんでいらっしゃるうちに元の1本のひもになる。以前、見たことがあるような気がするが、タネは知らない。演技が終わる度に、私どもの仲間は用具を手に、タネ探しに一生懸命だった。介護に当たる方も探したが、最後まで分からずじまい。手さばきがプロ並みだったのだ。

 この方と、デイの送迎車で乗り合わせ、初めて気がついた。「あら、お足が不自由?」と。駅前で下車された。やっぱり、足を引きずっていらっしゃる。でも、杖もつかず、しっかりした足取りで改札口へ歩いて行かれた。施設の方に聞くと、「○○さんのお近くの方で、気軽にボランティアで来てくださるんです」。

 80歳近いご年齢。そろそろ人手を借りたくなるお年ごろなのに、大勢の人々を楽しませ、慰めてくださる。生き方に感心し、いつまでもお元気でいてほしいという気持ちでいっぱいです。

(2008/05/21)