産経新聞社

ゆうゆうLife

在宅での看取り

 埼玉県所沢市 主婦 村尾洋子 63

 在宅ホスピスの先生が書かれた連載「最期のときを家族と」を読み、感じ入りました。

 脳腫瘍(しゅよう)だった私の夫も今年6月、9年間の闘病の末、逝きました。闘病中は先の不透明な、不安な毎日でしたが、昨年3月に在宅緩和ケアの先生に出会い、最期まで見守っていただきました。365日24時間の態勢に加え、本人はもとより、家族のケアまでしていただき、頭が下がる思いでした。

 在宅で看取ることは、正直、大変なことも多々ありました。看護師さんやヘルパーさんの介助が、夫を中心に丸い輪のように機能するまで格闘しましたし、痛みや薬による副作用がなくなるまで時間もかかりました。

 しかし、先生をはじめ、皆様の大きな力により、夫は日々前向きになり、「生きる」ことを仕事に、家族を守ってくれました。そして最期の時を、自宅で2人で迎えられたこと、至福の時というのでしょう。夫は最高の人生を、妻である私に残してくれました。

 思えば、痛みのために何度、救急車で大学病院へ行ったことか。その際、病院に受け入れ先がなく、救急車の中で待たされたこともありました。

 今、多くの方々が医療の仕組みが分からず、闘病を続けています。夫の闘病を通じ、若く情熱を持って患者と向き合い、在宅緩和ケアに携わる先生がもっと多くなり、患者の方々が尊厳を持って、温かいぬくもりの中、在宅で最期を迎えられたらと願う毎日です。

(2008/10/22)