産経新聞社

ゆうゆうLife

祖母の安堵に救われた心

 東京都大田区 会社員 古厩智子 27

 10月22日付「最期のときを家族と」に「毎日身内も集まって、介護の日々はにぎやかで楽しかった」とあり、私の家族以外にもそう思った方々がいるんだ、と感じました。

 祖母は胃がんで5カ月間の闘病後、9月に81歳で息を引き取りました。家族には短すぎる、それでも思い出深い5カ月でした。毎週末、祖父母の住む長野へ帰るたび、以前会ったときよりも小さくなり、一生懸命歩いて玄関まで送ってくれた祖母の姿が目に焼き付いています。

 8月中旬に入院しましたが、亡くなる2日前、付き添いの母に「家へ帰りたいなあ」と言いました。すぐに事前に探しておいた在宅ケアのお医者さん、看護師さんに連絡。祖母の一言からたった2時間で人工呼吸器、介護用ベッド、自宅へ帰る介護用タクシー、点滴や痛み止めなどを、勤務医や在宅ケアのお医者さんらが用意してくださいました。

 単純にうれしいというよりは不安もありました。家族にとっては不可能に挑むような、でも、絶対成功させなければ、と高揚感もある、まるで「プロジェクトX」のような心境。91歳の祖父は「家では対応できないのでは」と心配そうでしたが、帰宅した祖母の幸せそうな顔を見て安心したようでした。

 家に着いて「あー、幸せ。うちだもん」と言ったときの祖母の安堵(あんど)の表情は、私たち家族への最高の贈りものです。5カ月間、みな祖母を思って一丸となり、時間が許す限り長野へ集まり、家族のつながりを幸せに思いました。本当に皆が満足した楽しい日々だったと感じています。

(2008/11/05)