産経新聞社

ゆうゆうLife

すべてが整っていた夫の看取り

 大阪府堺市 主婦 杉山文子 81

 今年5月、自宅で85歳の主人を送りました。医療、介護、看護のすべてが整わなくてはできないことだったと思います。

 3月末の検査入院で腎臓がんが見つかりました。本人はすぐに家に帰りたがりましたので、在宅で世話してくれる医師と看護師を探し、入院中は好きなおすしや煮魚を病院に運ばせていただきました。

 桜の花が咲くころに退院。帰宅後は家族に囲まれ、大勢で鍋や庭で焼き肉などをつついては、楽しい時を過ごしました。アユの塩焼きが大好きで、にこにこと食べていました。車いすを用意し、車3台で孫たちと温泉にも行きました。主人が兵役に行く前に行ったという温泉で、とても楽しんでいたようです。

 亡くなる前の1カ月間は、在宅医や看護師さんがお世話してくださり、休暇中の孫も毎日、会いに来てくれました。子供3人も四国などから当番を決めて、そばにいるようにしてくれました。これだけの人たちに囲まれ、主人は満足しておりました。

 息を引き取る前日、山口で孫の結婚式が行われましたが、携帯電話で映像を見せてもらい、夜8時すぎには、式に出席した孫の1人が花束を届けに来てくれました。まさか翌日に亡くなるとは思いませんでしたが、孫が主人の安らかな姿を見送れたことは、何にも代えられません。

 主人には、よくこの日まで頑張ってくださったと、家族全員で感謝の日々です。主人も毎日、感謝しながら暮らしておりました。今回のみとりでは、いろいろ教えられました。私も主人にあやかりたいと思って暮らしています。これだけ条件が整うことはないかと思いますが、人はみなこうした見送られ方をしたいと思っているでしょう。

(2008/12/10)