産経新聞社

ゆうゆうLife

「家族との意思疎通が課題」に同感

 広島市 看護師 匿名希望 53

 11月26日付「特養で看取(みと)るには」で、東北学院大学の岡田耕一郎教授が「看取りに対する社会通念が定着していないだけに、施設と家族との意思疎通もこれからの課題」とした意見に同感です。

 私は特養に勤めて15年の看護師です。私の施設では、年間15人程度を当施設や嘱託医の病院で看取ります。看取りを「こうしてほしい」と言う家族は1割にも満たない感じです。

 原因は、9割の方が病院で亡くなる現在、「世間並みでないといけない」という日本人の習い性にあると思います。看取りの時に起きるさまざまなことで、親戚(しんせき)中から家族に批判や追及があり、兄弟げんかの種や決断を回避するのです。

 私は病院勤務の経験はありませんが、病院でチューブ類につながれて最期を迎えるより、特養での日常生活的な最期の方がよいと考えています。

 施設職員も、「死」を避ける傾向があります。病院に預ければ、責任は回避できます。「死」を縁起でもないと考える風潮もあります。入所時の看取りの希望確認も、当施設ではまだされていません。より良いケアを望むなら、家族の希望を書面で確認しておくことは重要だと考えます。

 また、高齢者の状態が悪化したとき、家族が動揺し、親族の意見が統一されないのは毎回のことです。家族の動揺で職員も動揺すると、家族はより一層動揺して悩み苦しみます。職員が看取りを通して人間的に成長することが、より良いケアにつながると考えます。

(2008/12/11)