産経新聞社

ゆうゆうLife

施設で見た壮絶な現実

 大阪府高槻市 女性 53

 団塊世代の姉を筆頭に4人きょうだいの私たちも、親の介護が切実です。各家庭には、生活習慣病で後遺症のある者がいたり、不況で収入の途絶えた者がいたり、介護すべき側にも問題が山積する中、母の介護がスタートを切りました。

 昭和初めに生を受けた老婦の誇りでもある家事へのプライド。他人さまにみっともないところは見せたくないと張る片意地に、加齢がかたくなさを加え、ヘルパーさんに訪問していただくにも一苦労です。週1度の家事援助の前夜は、不自由な体ではい回って掃除してヘルパーさんを迎えています。

 亡くなった元の連れ合いの母が施設に入ったため、時折、見舞いに行きますが、そこでは壮絶な現実を目の当たりにします。トイレに自力で歩いていっていたしゅうとめが、強制的におむつをあてがわれ、3カ月の間に全く歩けなくなり、いつ訪問しても鬱々(うつうつ)と寝ている状態。おかしいと問いつめたところ、医師に無断で安定剤と睡眠薬を3倍に増やしていたのです。

 怒りと恐ろしさで言葉も出ない私の目に飛び込んできたのは、同じ施設にいる認知症が進んだ老婦の暴れる姿です。フォークを振りかざし、投げつけ、かみつき、つばを吐きちらし、若い職員が3人がかりでも抑えきれないパワーで暴れていました。

 この施設では、ノロウィルスらしきもので集団入院患者が出ましたが、家族のだれも、原因を聞こうとも、施設に抗議しようともしません。退所させられるのを恐れているのか、厄介払いしたいのか、としゅうとめの面倒を見ている長男がつぶやいていました。

(2009/02/11)