東京都町田市 主婦 寺村佳江 51
2月18日付「最期のときを家族と」で「命の最期に味覚を総動員して味わいたいものに、ハマグリのうしお汁がある」とありました。私は「あっ!」と思いました。
25年前のひな祭りの日、母は肺がんの再発で入院中でした。転移もあり、深刻な容体でしたが、がん告知を受けていない母は、良くなるものと信じていました。
その日は妹が付き添いでしたが、夕食に出されたハマグリのうしお汁を「とてもおいしい」と飲んだそうです。妹はそれがとても印象的だったようで、その貝殻を大切に持ち帰りました。
うしお汁が「命の起源の味」だったなんて…。母が自分で食事がとれた最期のころに、偶然にもうしお汁が味わえたことに驚き、胸がいっぱいになりました。
がんがまだ、「不治」というレッテルのみ張られ、告知もためらわれ、緩和ケアも行き届かなかった時代です。私も妹も若さだけが取りえのがむしゃらな介護と看取りでした。けなげに頑張った当時がよみがえり、涙がこぼれました。
(2009/03/06)