産経新聞社

ゆうゆうLife

2人の生活がありがたい

 大阪府門真市 主婦 此尾(このお)怜子 71

 夫をデイサービスに送り出すとホッとする。夫(77)は3年前に認知症になった。今年2月からは、月曜日から土曜日まで毎日デイに行ってくれるようになり、少しリラックスできる時間が増えた。

 夫は時々、トイレに間に合わず、下着をベタベタにして大騒ぎする。しかし、パッドも紙オムツも自尊心が許さず「いらない」という。老々介護なので、私の体力も大変だ。最近、疲れやすく、ひざも痛くて外出は難儀だが、夫にできるだけ刺激を与えるよう、同窓会に連れて行き、映画も見に行く。

 映画を見た帰りの電車で「靴をはいてないのはおれぐらいだなあ」と言うので、足元を見るとソックスのままだった。映画館で脱いでしまったのだろう。以来、「靴、脱がないでね」と言うと「靴なんか脱ぐか」と言う。認知症になってから、常に怒りっぽい。

 夫を何げなく見守るしかないが、始終気は抜けない。友人からは「頑張りすぎて倒れるといけない。まずは自分を大事に。それから人生を共に過ごすのが偉業なのだ」と言われる。

 確かに、今2人でいるから話もできる。こういう時間を、いつまで続けてゆけるかと思う。年金は減りつつあっても、2人で生活ができる時間こそ、ありがたいと思う。

(2009/03/30)