産経新聞社

ゆうゆうLife

たばこが吸える幸せ

 大阪府枚方市 無職 松井喜代子 82

 群馬県のホーム「たまゆら」の火事で、職員が入居者にたばこを買い渡したとあるのを読んで、たばこが吸えるのは幸せだと、思わず筆を取りました。

 認知症の始まった夫は85歳。楽しみはたばこだけでした。2回布団を焦がしました。一度は、私はそばにおりましたのに、夜昼ない疲れについうとうとしてしまい、気が付いたときはけむりが出ていました。府営住宅で、近所に知れたら追い出されると思い、吸わせないようにいたしました。

 苦しみが始まりました。「これしか楽しみがないから」という夫に、「今日はたばこ屋さんが休みだから」と。心を鬼にするというのは、こんなことなのですね。菓子でごまかしたり、夫が灰皿でお茶を飲むまねをするのを見て、かわいそうで、声を出して泣いてしまいました。

 もう、分からないようになっていて、自分でガスをつけに行くこともあります。しばらく、ガス屋さんに頼んで、ガスを止めてもらいました。温かいものが食べたいし、ケアマネジャーさんを通してガス屋さんに頼み、元栓を夫の分からないところにつけてもらって、助かりました。

 私ももう82歳です。いつまで続くやら、長生きしすぎたのかと思います。

(2009/04/17)