産経新聞社

ゆうゆうLife

父の介護が楽しくなった

 さいたま市 介護職 小川園子 60

 同居中の父(85)の介護をして4年がたちました。大正生まれの父は教諭をしていたためプライドが高く、人に頭を下げたりするのは好まず、自分の意見が正しいという人です。その父が、脳梗塞(こうそく)で要介護2になり、娘の私が介護をするのは当たり前と思っています。

 私は、父の介護をする前から有料老人ホームやグループホームなどで介護職として勤務していました。父の介護については、朝の支度と通院介助、ケアマネジャーとの話し合いに参加するだけで、いい加減な娘でした。

 しかし、母(85)が私の不満を、私の妹や私の息子にこぼすようになりました。母は「子供は親のことを聞いていれば良し」とする考えの人です。私がいくら説明しても納得せず、「よその年寄りには優しく、家の年寄りには知らん顔なんだ」と繰り返しました。毎日顔を合わせるのも苦痛、逃げだしたくなる毎日で、このような状態が3年も続きました。

 そこで気持ちを切り替えることにしました。以前、勤めていたグループホームでレクリエーションを実践していたので、家でも「私と遊びましょう」と、血圧測定をしている父母の前に座り、口角の運動、「あ、い、う、え、お」の声出しをしてもらいました。最初は渋々つきあっていた父母も、次第に私の相手をしてくれるようになり、私は朝のレクリエーションが楽しくなってしまいました。

 大人用パズル、あやとり、ビーチボール遊び、じゃんけん遊び、昔の歌などを3人でするようになりました。朝になると、「今日は何をするの?」と楽しみにする母がいます。15分から20分ですが、久しぶりに親子のふれあいの時間を持てるようになりました。「私が遊んでもらっているのかな」とも思うこともあります。

 いがみあっていたときが、遠い昔に思えます。こんな介護も楽しいですよ。

(2009/07/09)