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ゆうゆうLife
 

(1)気がつけば一人

 気がつけば一人暮らしである。

 少し前までは、親の介護や子育てに悪戦苦闘。この煮詰まった関係をなんとしよう、と思っていたはずが、いつのまにかばらけて、3世代4人家族が、3人になり、2人になり、ひとりになった。

 わが身に降りかかってみて、なるほど、現代の家族とはこのように展開するのか、家族の機能って、子育てと介護だったのねえ、としみじみする。

 ちなみに私は団塊世代だ。核家族化したこの世代の家族も、子育てを終えれば、まずは、夫婦二人に、いずれは一人にと、私のように単身化していく宿命にある。

 昨年の秋に発表された国勢調査でも、すでに65歳以上の一人暮らしが約386万人。この5年で増加率27・5%。これに、団塊世代の単身化が加わったら、この日本は一人暮らしの老人ばかりの国となる。

 大変かもしれない。が、仲間がいれば怖くないかもしれない。

 というわけで、今や家族がいてもいなくても、女も男もいずれは一人で生きる覚悟がいる時代にいよいよ入っていくのである。

 すでに単身の私などは、とりあえず「一人で生きる練習」と称して、食事も旅も遊びも一人、を心がけている。

 が、妻たちは「まずは、資金の確保でしょう」と主張する。とくに、夫の定年後が重要ポイント。退職金や年金をどう分けるか。お金をめぐる夫婦の攻防は、なかなかにシビアであるらしい。

 世間の妻の常識(願望?)では、退職金は一部貯蓄し、残りは妻と夫で折半。年金は家計費として妻が管理する。

 で、夫の小遣いは?というと、それは当分自力で稼いでよ、とか。

 この妻の常識に従って、定年後に、駅前の自転車整理のアルバイトを始めた夫がいる。

 致し方なく始めた小遣い稼ぎだったが、元○○会社部長の肩書を失って見る世間は、思いのほか面白い。これまで、出会ったことのない人とも知り合い、視野もぐんと広がったそうだ。

 昼はスーパーのお弁当を買って食べるが、より取り見取りで「今日は何にしようか」と楽しみになった。彼なりの自由を満喫している気分。まさに、これが彼の「一人で生きる練習」で、これをやっておくかおかないかで、男の「老後の自立」に差が出てくる。

 なるほどと思う。

 妻に負けるのもまたよしなのかもしれない。(ノンフィクション作家 久田恵)

(2007/01/12)

 
 
 
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