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ゆうゆうLife
 

(12)過保護な母の「孫育て」

 「最近、ぐんと活動力が低下してしまって…」

 地域でボランティアのサークルを長く続けていた女性が嘆いていた。

 中心になっていた50代後半から60代の主婦仲間たちが、ここのところ次々と活動からリタイアしてしまっているそうだ。

 なるほど。地域活動主婦たちも定年を迎えた夫の在宅化で、またもや家庭に縛られてしまったのねえ、と思ったら、さにあらず。

 原因は、な、なんと「孫育て」。

 ある人は、娘と孫の面倒をみるため、娘のマンションに毎日、毎日、通っているとか。

 孫の沐浴(もくよく)、掃除、洗濯、食事の支度…。

 今時の若い娘たちは、実家の母の手助けなしに子育てができないらしい。放っておいたら、育児ノイローゼになり、子どもを虐待しかねないから、と言う。

 ほんとかしら?

 別のある人は、娘が子連れで毎日、実家へ通ってくる。この娘と孫の世話で、いまや外出不能の専業主婦になってしまったとか。

 実態にびっくりだ。

 が、聞けば、最近は「子どもは実家に通って育てる」が、若い世代には、ごくフツウのこととか。

 これまでの母の過保護が、「結婚しても妻にも母にもなれない娘たち」を量産してしまっているらしいのだ。

 「夫が残業で遅いから、とか言って、娘は毎日、ウチで夕食も食べていくわよ。自分の夫の分はお持ち帰りね。給料が少ないから、そうでもしないと暮らせないらしいし」という人も。

 確かに、孫は可愛いく、愛しいにちがいない。

 だからといって、やっと子育てを終えてホッとした50、60代の女性たちが、自分の自由な時間をここまで犠牲にして、孫育てを担いたいと、本心で思っているのかどうか。

 疑問だ、と思っていたら、ある人が言った。

 「娘にね、冷たい親だと思われて、嫌われたくないの。いずれ一人になるかと思うと、子どもとのきずなはね、強くしておきたいから。自己防衛かもねー」

 ふーん。なんだか、シャキッとしていない。子どもは自分のために育てるのではない。親には、子どもを自立した大人にする社会的役割もあるでしょう、と思う。

 「自力で子どもを育てられない大人」ばかりを、こうして、みんなして、せっせと世間に蔓延(まんえん)させてどうするのかしら。(ノンフィクション作家 久田恵)

(2007/03/30)

 

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