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(13)「ペーパー離婚」浮上

 今や、死語かもしれない。が、30年くらい前、「ペーパー離婚」というのがはやったことがある。

 これは、つまり、書類上の離婚のこと。夫婦が経済的にも精神的にも対等でいるには、婚姻届という「紙きれ1枚」で縛り合うのはいかがなものか、ということ。

 夫婦で議論しているうちに、だんだんそういう考えになって、ペーパー上の離婚をする人たちが、わが知人にもいたのだった。

 ま、「女の自立」とか「女の解放」とか、いろいろ言われていた時代のことだけれど。

 ちなみに、婚姻届を出さないでいる夫婦のことを、「事実婚」と言う。で、「ペーパー離婚」をして、「事実婚」になれば、愛と信頼という夫婦の実質を失ったら別れましょう、ということになる。こういうことをあえてしたがるのは、やはり団塊世代。「友だち結婚」とか「ニューファミリー」とか、新しい時代のウェーブを作り出すのがなにかと好きな世代だったのだ。

 その彼らが「定年期」を迎えようとして、またまた、この「ペーパー離婚」が浮上。というのは、すでにそれを実践したという人がいて、やっぱり、この「紙切れ1枚」の力って、計り知れないわ、と、実感をこめて語るからである。

 彼女によれば、「ペーパー離婚」によって、実質的な「熟年離婚」が回避されたらしい。

 聞けば、同じ家に住んで、家事をするのはもっぱら彼女。これまでとなんら基本の生活は変わらない。でも、気持ちがとてもラクになったそうだ。

 「彼はもう夫じゃない、と思えば、なにをしようと平気になった。私はもう妻じゃないと思えば、自由になった。夫婦の縛りがとれたら、今、一緒にいる理由が、利害も利便性も含めてみえてきた。おかげで前より、夫と割り切って向き合える。遠慮しあったり、親切にしあったり。これって、熟年だからこそ、できる関係だなあ、と思うのよ」

 なるほど、なるほど。この「ペーパー離婚」で、お互いが出会い直せたり、必要を感じ合えたりすれば、また「紙きれ1枚」の届を出して、「ペーパー再婚」するのも簡単だし。

 こんなふうに、「婚姻届」を「住民票」程度に、ラフに考えるスタンスもあるのかと思う。それで、夫婦関係の破綻(はたん)が回避できるのなら、いい知恵かも。

 「離婚」の前には、とりあえず「ペーパー離婚」で様子見。このスタイルは、今後、熟年夫婦間ではやるかもしれませぬ。

(ノンフィクション作家 久田恵)

(2007/04/06)

 

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