得ダネ情報

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得ダネ情報![]() (14)家事サービスの値段表わけあって、目下、築17年の中古住宅に住んでいる。 この家は、2階の部屋に、リビングやキッチンを通らずに玄関から直行できる。2階にも洗面所とトイレがあり、個室には鍵がついている! いわば、個室文化を形にしたような家。さらに言えば、子供がひきこもりやすい家だ。 どうもこういう家は、団塊世代が40歳前後でマイホームを建てたころにはやっていたらしい。元同級生の家に行くと、いずれもこのタイプで、妻であり、母である友人たちは言う。 「なんかねえ、子供の思春期以降、ずっと私って、この家で無給で働くペンションの女主人みたいだったわよ」と。朝起きて朝食を整え、「ご飯できてまーす」と声を掛ける。せっかく整えたのに、「本日はいりませーん」と平気でキャンセルするパラサイト娘や息子たち。 今や一応、社会人の彼らがお出かけ中は、掃除、洗濯、外回りの花鉢などを美しく保つ。家に戻った彼らは、そんなものには目もくれず、自室へ直行か深夜にご帰宅。「ご飯ですよー」と言っても、誰も出てこない、なあんて日々も少なくない。むろん、家事を手伝う家族はなく、夫はといえば、パラサイト子供と似たか寄ったか。 彼女たちは言う。 「これは、主婦がさびしくなる家、私ってなに?と常に問いたくなる家よねえ」と。 そして、ついに、ある友人が決行した。 ペンションの女主人みたいな立場なら、それはそれでよし。だけど、せめて、無給ではなく、有給で働く立場になろう。 彼女は、キッチン&リビングに家事サービスの値段表を一気に張り出した。朝食300円、夕食600円。洗濯1点100円…という具合に。 「なに、これ、高すぎ!」とか、家族はパニックに陥った。が、「これは、家族それぞれの家庭内自立に向けた教育プロジェクトです」とにっこり笑って宣言し、請求書をびしばし発行したとか。 「今月はツケにして」とか、「もっと低料金化をはかってくれ」とか、「労働で支払いたい」とか、いろいろ交渉ごともあって、家族関係も活性化したとか。 目下、定年前の夫は対象外。この特別扱いが妙に彼を上機嫌にさせている。 「さびしい主婦」から「注目される主婦」へ。愚痴っているより、ユーモア含みの戦略戦術は、なかなかによく効くようだ。(ノンフィクション作家 久田恵) (2007/04/13)
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