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ゆうゆうLife
 

(31)女だって生涯現役

 70歳を目前にした知人から、電話が掛かってきた。

 「ねえ、あなたに聞きたいことがあるの。正直に答えてくれる?」

 相手は、20代のアルバイト時代にお世話になった「姉御」のような人。女が働いて生きることのなんたるかを身をもって教えてくれた人生の先輩だ。にわかに緊張する中、彼女が言った。

 「70歳にもなって、働いているのってヘンかなあ」

 オットットー、と思った。

 ずっと自営で働いている彼女に定年はない。年金もない(でも、とってもお金持ちだけれど)。おまけに、働いていない彼女など想像できないほどの仕事好き。

 「それって、仕事を辞めたい、ってこと?」

 「そんなわけないでしょっ。私が、仕事やめてどうするの!」

 だったらそんなこと聞かないで、と思わず爆笑しそうになったら、「だからあ、そのことが世間の常識に照らして、ヘンか? と聞いているのよ」だって。

 世間の常識? それがどうした? すでに、常識を外れて生きてきたのではなかったか?

 そう問いたいが、どうも女は、50歳とか60歳とか70歳とか、各年齢の次の大台に乗る直前には、情緒不安に陥いる。つい、これからの私、これでいいのか、などと思ってしまうものだ。

 ともあれ、何歳まで働いていようと全然、へんじゃない。70代などまだまだ。そういえば、先日、旅行会社と提携して、「高齢者のための海外ツアーを企画した」と言っていた知り合いの大先輩は、確か80代のはず。仕事が趣味、趣味が仕事と、いつも言っているパワフルな人だ。

 そんなこんなの方たちのことを伝え、「今はね、女もね、生涯現役がはやっているのよ。ずっと働くって、カッコいいと思うけど」と言うと、「姉御」は「あら、そう? カッコいいの? じゃあ、いいわ、当分このまま頑張るわ」と、電話が切れた。

 実は、なにを隠そう、私も60歳という年齢の節目が目前だ。いわば「女の定年期」。つい、このままでいいのかなあ、と思わないでもない。けれど、70歳目前の彼女が「頑張る」なら、私が「頑張らない」でどうしよう。

 と思っていたら、同世代の知人から、「再就職した」とのメールが届いた。還暦記念の再就職だって。最近の熟年女たちは、なんと人生に前向きなのだろうと、感じ入ってしまうのだった。

 (ノンフィクション作家 久田恵)

(2007/08/10)

 

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