【ゆうゆうLife】家族がいてもいなくても(34)若い世代の「介護不安」
女性が数人でわが家を訪れた。30代前半。若い。前途洋々ねえ、と思わず口元がほころんだ。
が、じきに「介護」の話になった。聞けば、いずれも親が60歳前後。その彼女たちは、既婚、未婚と立場は違うのだが、口々に言うのであった。
「親に介護が必要になったら、どうしよう…」と。
30代で、もう親の介護の心配をしている!
思えば、私が介護を始めたのは30代の終わりだったから、時には、そういうことになってしまう人もいる。が、たいていの人にとって、親の介護は、40、50代以降の課題なのでは?
そこで、「まだ、考えるのは早すぎる」と言ったのだけれど、彼女たちはうなずかない。
「いえ、思うんですよ。口には出さなくても、本音では親は介護を期待しているんだろう、と。でも、自分にはとってもできそうにないとか思って…」「親に老後の資金はあるのかとか不安。でも、面と向かって聞けないし。すごく心配ですよ…」
中のひとりなどは、将来の介護を考えて、体重が重すぎたら困る、とさりげなく親にダイエットの要請をしたらしい。いやはや。
彼女たちは、自分の親世代が、老親介護に翻弄(ほんろう)されるのを目の当たりにしている。高齢化が大きな社会問題になっていたりもする。そのせいで、早いうちからことさらに不安を募らせているようなのだった。
さて、そんなにも心配されている親世代の方はどうなのか。
私の知るかぎり団塊世代は「自分たちは、親からは介護を期待されてきたけれど、自分の子どもには期待できない」と、みな認識している。
だから、老いたら地域で自立して頑張るしかなく、いずれは介護ホームへと思っている。でも、目下、都会のホームはどこも満杯だから、日本全国、空いている施設を必死で探しなさい、とでも子どもに言っておくしかないわね、とか言い合っているわけで…。
つまり、日本の現状としては、国にも期待できず、さほどの選択肢もなく、せめて、地域に友を作り、親子縁より友だち縁、地域縁を支えに生きていかなきゃ、と思っているのだ。
「介護不安」に陥っている若い世代の声を聞いたせいで、「老後」どころか、「要介護後の生き方」まで、自己責任で考えねばならない、それが私たちの世代の宿命らしい、と実感を新たにしたのだった。(ノンフィクション作家 久田恵)
(2007/09/07)