産経新聞社

ゆうゆうLife

(45)「出戻り息子」対策は

 近ごろ、「出戻り子ども」がはやっているようだ。「結婚してほっとしていたら、戻ってきちゃったのよー」と、嘆く50、60代に、立て続けに会った。しかも、よく聞いてみたら、いずれも「娘」ではなく「息子」だったりする。

 今や、そんな時代か! と、驚いて、まわりに聞いてみたら、「ウチの息子もあり得る…」と漏らす同世代が少なくなかった。

 どうも、その口ぶりからは、戻ってきたら、親としては、受けいれざるを得ないだろう、と思っている様子がみてとれる。

 「だってよ、子どもに戻るところがないと、ネットカフェ難民とか、若年ホームレスとかになっちゃうじゃないの!」

 なるほど。こういった背景には、それなりのわけがあるらしい。

 どうも、就職氷河期のせいで、経済的自立がむずかしく、時代のワリを食った若者層が結婚期に入っちゃったもようなのだ。

 しかも、生活基盤が心もとないなかで、なし崩し的に「できちゃった」結婚。これはこれで、別にいいとしても、問題なのは、この世代は苦労をしているわりには、辛抱が足りないこと。

 辛抱の足りない同士は、なにかあれば、すぐに双方の実家へ駆け込んでいく。親は甘々。息子や娘の結婚をなんとか持続させるべく、つい、口を出し、手を出し。

 それやこれやを繰り返すうちに、とうとう…、ということになりがち。そう、口を出し、手を出した分だけ、親は責任を取らざるを得なくなり、出戻る息子や娘を受け入れてしまうのだ。 

 「出戻り娘」の方は、子どもを育てる、という実人生を背負って生きねばならないから、「離婚」をきっかけに成熟していくかもしれない。が、「出戻り息子」の方は、どうなるんだろう。それを心配している母親の彼女が言った。

 「結婚に懲りて、家付き息子になるんじゃないの? つまり、親の介護をして、最後を看取(みと)ってくれるのが、この出戻り息子ってこと。うーん、これって、親にとっては悪くないシナリオかもよ」

 なるほど。逆に言えば、親の甘さに乗じて安易に出戻ると、こういう「人生のわな」にはまる危険性が大きいゾー、ということ。

 それで、決定。議論の末、「息子の出戻り防止」には、「良かったあ、介護要員ができたあ!」とあえて大げさに歓迎してみせる、この手が一番良さそうだ、ということになった次第。が、しかし。こんな対策でいいのだろうか?(ノンフィクション作家 佐藤好美)

(2007/11/23)