産経新聞社

ゆうゆうLife

(47)「結婚」の形、多様化

 同世代の知人の子どもたちが、結婚期に突入。それに伴い、盛り上がる話題も変化してきた。

 ちょっと前までは、子どもの就職問題。その前は、悩める思春期問題。この時期さえ過ぎれば、もう子どもの話題など消え去ると思っていたのに、どうして、どうして。母にとって、子どもの話題は、延々のテーマのようだ。

 ともあれ、女たちの井戸端会議は情報満載で、オオッ、ソウイウコトニナッテイルノカ、といろいろ学ぶことがあってためになる。

 それによると、近ごろの若者の「結婚」の形は、聞けば聞くほど、多様化の一途をたどっているらしい。

 「結納?」「あら、そういうのは、今はやらないのよ」「でも、ウチはやったけど」「ウソーッ!」から、「結婚式の費用?」「普通は両家で折半じゃないの?」「だめだめ、親がお金なんか絶対、出しちゃあ。結婚式は、自分たちでお金をためてからやりなさいって、突き放すのが正しい態度よ」

 などなど。その手順もスタンスも、まったくもってそれぞれ。

 しかも、それぞれの事例をつき合わせてみても「結婚式、入籍、同居、妊娠」というかつてのスタンダードを踏襲したケースは皆無だった。今や「同棲(どうせい)、妊娠、入籍、結婚式」という順序らしい。

 思えば、「同棲時代」などというものをはやらせたのは団塊世代。その次の世代あたりで「できちゃった結婚」が花盛りだった。

 わが身のことを振り返れば、親も今さら、息子や娘に「結婚」の手順とはかくあるべし、と古来の規範や儀式を押し付けるわけにもいかないのが実情だ。

 ある人が言った。

 「この年齢になって、やっと、みなで取り決めた儀式を守るって重要だったんだなあ、あれって、ものごとを分かりやすくしていたのね、って気がついたわ」

 実は、私もそう思う。

 冠婚葬祭なんてえ、なにごとも個人の気持ちこそ大事にすべきなのよ、と主張していたけれど、「結婚」の手順ひとつとっても、こう混沌(こんとん)としてくると、なにをどう考えていいものか。

 親の立場になってみれば、とりあえず、儀式にのっとり、きちんと神仏には、早めに愛を誓っておきましょう、と言いたくなる。

 そう、今さら言うのもなんだが、年齢とともに人が保守化するとは、こういうことだったのね、と実に感慨深い。

 私? はい、未婚で子どもを産んだ元シングルマザーです。(ノンフィクション作家 久田恵)

(2007/12/07)