産経新聞社

ゆうゆうLife

(50)一人でも優雅に外食

 私は家で仕事をしている。が、ひとり暮らしになって以来、出掛けた日の夕食は、外で済ませる。

 この女の「一人外食」、最初は落ち着かなかったが、今はまったく平気になった。食事にビールとかワインをつけて、「今日は、楽しいなあ」と、自己完結した時間を過ごせるようになった。

 先日、あらためて見回したら、50代、60代らしい「一人外食」の女性が、私のほかにもちらほら。ランチタイムには、ひとりの女性もよくみかけるけれど、今や、夕食タイムも? とちょっと思いがけない気がした。

 という話をしていたら、居合わせた知人の2人までが、「あらあ、私は毎日、一人外食よ」と言い切ったので意表をつかれた。

 いずれも50代の女性だ。

 ひとりは夫はいるけれど、子どもの自立をきっかけに、目下、マンションでの一人暮らしを実践中で、この実践は、いわば人生の小休止。家族の食事作りの拘束からの解放を楽しんでいるのだから、自分のために夕食を作る気にはなれないそうだ。

 もうひとりは、元母子家庭で、子どもが家を出た後のシングルライフを謳歌(おうか)している身。彼女は、家で食事は一切作らないと決めている。仕事が休みの日も、わざわざ着替えて食事に出掛ける、という徹底ぶりだ。「生ゴミが出ないし、キッチンは汚れないし、快適よ」とのたまう。

 その傍らで、同世代の主婦が、私は、人生で一度も「一人外食」などしたことがないのに!と目を点にしていた。

 と思いきや、夫の定年後は、それぞれ自立自助、「夕食は各自で」、ということに決めてしまったので、「私も、なにかと外食が増えたわねえ」という人もいる。

 まったくもって、人それぞれ。

 どうも、子育てを終えたあたりの50代ぐらいから、この「夕食」という項目だけでみても、女性のライフスタイルは、世間で考えられている以上の多様さをみせている。

 毎晩「外食」で済ます日々を、「わびしい」とか「さびしい」と考える男性は多いけれど、女性の方はどうも「一人外食」を、「優雅」とか「おしゃれ」とか感じる時代に入っているようだ。

 そういえば、外国映画などには、おしゃれをした老女が、街の小さなレストランで、ひとりで優雅に食事をしているシーンがよくある。

 来るべき日のために、今から、練習をしておくのも悪くないかもしれない。(ノンフィクション作家 久田恵)

(2008/01/11)