今年もいよいよ終わりに近づいた。なにかにつけ、年内にやってしまいましょう、と焦っているので息切れがする。
今年は父を亡くして、楽しいことなど何もなかったので、振り返る気分になれない。ここはもう、いろんなことにすべて片をつけて、今年の私から来年の私へと旅立ちたい、と願っている。
で、ふと気がついたのである。
あらら、今年の年末年始は、私、一人っきりじゃないの、と。
これって三十数年ぶりかしら。いや、よくよく考えてみれば、生まれて初めてかもしれない。
若い時は、1人暮らしをしていても、年末年始は実家に帰るとか、友人と遊んでいた。
子供が生まれてからは、常に子供が一緒。子供が自立した後は、親の介護で常に親と一緒。親が介護ホームに入居した後も、年末年始は、家に連れ帰ったり、こちらが介護ホームで過ごしたり…。そして、息子は結婚し、今年からは、年末年始は妻の故郷へ行くことになるらしい。
おお!と思う。
この年になって、生まれて初めて、年末年始の1人体験をすることになる。そして、これからたぶん、ずっとそうなる。
となれば、いささかの感慨を覚えずにいられない。
おまけに、今年は喪中だから、なにもしないことになっている。お飾りなし、お節なし、初詣でなし。
ここは、いっそ旅にでもと思って調べたら、年末年始のホテルは、どこも2人以上とのこと。宿泊料2人分を払わないと泊まれないみたい。しかも、とんでもなく高い。それに、寒いし。家にいるのが一番かも。亡き父母も「喪中のお正月くらいおとなしくしていなさい」と言っている気もする。
ということで、家でひとりで年末年始を過ごすことにした。
そこで、「今年の年末年始は、私、1人よ」と周りの知人に言いふらしてみたら、なんということだろう、「さびしいわねえ」と言ってくれる人は誰もいなかった。
誰も彼もが、「いいわねえ、うらやましい。一度でいいから、そんな年末年始を過ごしてみたーい」ですって。
中には、娘夫婦に子連れで居座られるとか、夫がテレビの前で昼からお酒を飲み続けるとか、今からもう愚痴の出てしまう様子。
現役主婦にとって、どうも年末年始は、1人だけ慌ただしくて、ちっともうれしくない家族イベントのよう。でもね、愚痴の出るうちが人生の華かもよ、と、とうとう1人になった私は思うのだった。(ノンフィクション作家 久田恵)
(2008/12/26)